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61話 ノヴァの新しい力


黄金の光に包まれたノヴァと、黒槍の執行者ルナグラム。

止められた黒槍は、ノヴァの肉球に触れたまま震えていた。

黄金が、槍身をゆっくり侵食していく。

ルナグラムは即座に槍を引き戻し、距離を取る。

その動きに初めて慎重さがあった。


「妙な力だ」


フィリアが小さく訂正する。


「妙じゃない。強い」


レナは頷いた。


「それな!」


ルナグラムが地面を蹴る。

黒い残像が十本に分かれ、全方向から突きが放たれる。

喉。

心臓。

脚。

背後。

全て急所。

ノヴァは動かない。

黄金の瞳で見つめるだけ。

槍先が触れる寸前――

全ての突きが反転した。

軌道が逆になる。

十本の黒槍残像は、放った本人へ向かって突き返される。

ルナグラムが咄嗟に跳び退く。

自分の技が、今の自分を追ってくる。

肩。頬。脇腹。

三か所を浅く裂かれた。

レナが叫ぶ。


「自分で自分刺してる!」


ルナグラムは眉ひとつ動かさず、槍を地面へ突き立てた。

こん。

前と同じ衝撃波。

王城の壁を砕いた、広域破壊。

黒い波動が広場全体へ走る。

だがノヴァの足元で黄金の輪が広がる。

次の瞬間。

衝撃波が反転。

中心点を失った波が逆流し、発生源へ戻る。

ルナグラム自身に直撃した。

轟音。

石畳ごと吹き飛ばされ、数十メートル先の塔残骸へ叩き込まれる。

煙が上がる。

レナが口笛を吹く。


「気持ちいい返し!」


瓦礫の中からルナグラムが立ち上がる。

鎧にひび。

だが闘志は消えていない。

彼は黒槍を空へ投げた。

槍は月光を吸い、巨大化する。

王都上空に現れたのは、塔ほどもある漆黒の槍。


「落ちろ」


天罰のように降る。

人々が悲鳴を上げる。

エリシアが兵を庇う。

だがノヴァは空を見上げ、尻尾を一振りした。

黄金の波紋。

巨大黒槍が空中で停止。

くるり、と向きを変える。

先端がルナグラムへ向く。


「……!」


今度は執行者が初めて本気で焦った。

黒槍は落ちる。

自分の真上へ。

大爆発。

広場の外周が抉れ、黒煙が上がる。

煙の中で、ルナグラムが膝をつく。

鎧は半壊。

槍もひび割れている。


「……反射ではない。因果反転か」


フィリアが少し感心する。


「頭いい」


レナは肩をすくめた。


「気づくの遅いけどね」


ノヴァの黄金の足跡が広場に広がっていく。

傷ついた兵士たちが癒え、崩れた壁が戻り、割れた石畳が修復される。

同時に、敵意ある力だけが反転する。

攻撃すれば、自分へ返る。

壊そうとすれば、自分が壊れる。

ルナグラムは静かに笑った。


「なるほど」

「これは執行者殺しだ」


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