表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
59/113

59話 命の危機


ノヴァは塔の先端に立つ。

落ちてくる黒い流星を見上げる。

小さな幼体のまま。

風が逆巻く。

レナは剣を抜き、横に並ぶ。


「今度は一緒にやるわよ」


フィリアも背後に立つ。


「落下阻止」


パウはなぜかヘルメットを締め直した。


「ぱう!」


黒い流星が迫る。

王都上空、数秒後に激突。

ノヴァの目が光る。

今度は受け止める番だった。

黒い流星が落ちる。

月から跳んだルナグラム。

その速度、その質量、その殺意。

王都上空の空気が裂け、塔という塔が軋んだ。

レナが歯を食いしばる。


「来る!!」


フィリアの氷天蓋がきしむ。

ノヴァは尖塔の先端で、真正面から迎え撃つ姿勢を取った。

小さな体。

だが退かない。

ルナグラムが黒槍を突き出す。

ノヴァは前足を上げる。

ぺしーーーの直前。

黒槍がわずかに軌道を変えた。

肉球ではなく、肩口へ。

フェイント。

槍先がノヴァの脇腹を貫く。

同時に、月からの落下エネルギーが全て叩き込まれた。

轟音。

王都中央区画の窓ガラスが一斉に割れる。

尖塔が根元から折れた。

白い小さな体が、一直線に吹き飛ぶ。

ノヴァは石造りの屋根を三つ突き破り、広場の噴水へ叩き込まれた。

水柱が上がる。

石畳が砕ける。

静寂。

レナの顔色が消える。


「……ノヴァ?」


フィリアも目を見開く。


「まずい」


噴水跡。

瓦礫と水煙の中で、ノヴァは倒れていた。

白い毛並みは血で赤く染まり、脇腹には深い裂傷。

右前足も不自然な角度に曲がっている。

呼吸は浅い。

立ち上がれない。

レナが駆け寄り、膝をつく。


「ノヴァ! ノヴァ!」


返事はない。

耳がわずかに動くだけ。

フィリアが即座に氷で止血し、傷口を凍結固定する。


「意識低下」

「出血多い」


その声に焦りが滲んでいた。

広場にいた兵士たちが息を呑む。

白き守護狼。

無敵だと思っていた存在が、初めて明確に倒された。

人々の顔から希望が消える。

ルナグラムは折れた塔の残骸へ降り立った。

傷ひとつない。

黒槍を肩に担ぎ、噴水跡を見下ろす。


「なるほど」

「強い。だが幼い」


一歩、また一歩と近づく。


「成長する前に処理して正解だった」



レナが立ち上がる。

目に涙。

だが声は震えていない。

剣を握る手だけが白い。


「……撤回しなさい」


ルナグラムが首を傾げる。


「何をだ?」


レナは剣先を向ける。


「ノヴァを処理対象みたいに言ったこと全部よ」


次の瞬間。

地面を砕いて突撃した。

同時に、フィリアの周囲の温度が急降下する。

王都中央広場が一瞬で凍りついた。

噴水。

石畳。

空気中の水分。

全て氷へ変わる。

兵士たちが震える。

レナが叫ぶ。


「合わせるわよ!」


フィリアは低く答えた。


「当然」




倒れたまま、ノヴァの視界はぼやけていた。

痛い。

動けない。

体が重い。

遠くでレナの声。

フィリアの冷気。

人々の悲鳴。

負けた。

その言葉がよぎる。

だが。

ノヴァは思う。

まだ、色んなご飯食べてない。

終われない。

わずかに指先が動いた。

白い毛並みの奥で、何か新しい力が脈打ち始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ