55話 エターナル・ノヴァ
「遅い」
空間全体から声が響く。
「この城は私の眼。私の脳。私の器官」
巨大核が脈打つ。
「君たちが技を放つより先に、私は未来を読む」
赤い光線が四方八方から放たれた。
レナが跳ぶ。
フィリアが氷壁を張る。
ノヴァは微動だにしない。
光線は三人の未来位置を正確に狙っていた。
だが。
レナは予測より雑に転んだ。
「うわっ!」
光線が外れる。
フィリアは予測より一歩だけ後ろに下がった。
外れる。
ノヴァはその場であくびした。
外れる。
第一観測者の声が揺れる。
「なぜだ!?」
レナが起き上がる。
「こっちも分かってない!」
フィリアが指を鳴らす。
足元から氷柱が乱立し、視線の目玉群を串刺しにする。
レナはその氷柱を足場に駆け上がる。
空中で回転しながら剣を投げた。
一直線に巨大核へ。
第一観測者が光壁で防ぐ。
その一瞬。
ノヴァの目が細くなる。
隙。
ノヴァが立ち上がる。
白銀の神狼の影が、天獄城全域へ広がる。
外殻より巨大。
塔群より高い。
レナが空中で固まる。
「え、今回デカくない!?」
フィリアが珍しく少し驚く。
「……更新した」
第一観測者が叫ぶ。
「観測不能! 観測不能!!」
ノヴァは咆哮した。
音ではない。
存在そのものの一撃。
白い星々が城内に生まれる。
一つ。十。百。千。万。
それらすべてが同時に巨大核へ吸い込まれていく。
技名をつけるなら。
エターナル・ノヴァ。
光。
何も見えない。
何も聞こえない。
次に感じたのは、落下だった。
レナが叫ぶ。
「落ちてる落ちてる落ちてる!!」
天獄城ラグナロクそのものが砕け、星空の中で崩壊していた。
赤い外殻が流星群となって散る。
第一観測者の声が遠ざかる。
「ありえ……な……」
消滅。
フィリアが片手を上げる。
古代転移装置との共鳴光が開く。
「今」
レナがノヴァを抱え、パウを脇に抱える。
「了解ぃぃ!」
四人まとめて白い門へ飛び込む。
次の瞬間。
王都アルセリア広場。
昼のような閃光と共に帰還した。
人々が一瞬静まり、次の瞬間に歓声が爆発する。
「帰ってきた!」
「勝ったんだ!」
「空の赤い星が消えたぞ!」
空にはもう脅威はない。
青空だけが広がっていた。
エリシアが駆け寄る。
レナは膝から崩れた。
「もう宇宙はこりごり……」
フィリアは無表情のまま座り込む。
「少し眠い」
パウは誇らしげだった。
「ぱう!」
ノヴァはふらつきながら一歩進む。
そして王女の前で止まり――
ぺし。
頭に肉球。
王都全体が笑いに包まれた。
謎の男は呟く
「観測者が全滅したか……」
月からノヴァを見つめる
「記録にない存在。厄介だ。」
月に槍を突き立てる。
「早めに始末しとこう」




