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52話 白い機兵


警報音が鳴り響く。

低く、不快な金属音。

壁面が開き、そこから兵が現れた。

人型。

だが全身は白い甲殻で覆われ、顔の位置には赤い単眼。

槍。盾。翼。

百体以上。

レナが剣を抜く。

フィリアの周囲に冷気が集まる。

ノヴァはすでに走っていた。

白い機兵たちが一斉に突撃する。

槍列。

空中隊。

後方砲撃。

統率された動きだった。

ノヴァは最前列へ飛び込み、盾の隙間をすり抜ける。

ぺし。ぺし。ぺし。

三体の頭部が同時に停止。

レナが横から斬り込み、槍兵をまとめて薙ぎ払う。

フィリアは空中隊の進路に氷の棘を展開。

翼兵たちが次々と突き刺さって墜落する。

パウは後方で転んでいた。


「ぱうっ!」


役割はぶれていない。



その頃、地上。

王都アルセリア。

天獄城はまだ高空にある。

各都市の連合軍が陣を敷いていた。

鉄都グランバルド製の超長距離砲が火を吹く。

轟音。

巨大な魔導砲弾が空へ伸び、ラグナロク外殻へ直撃。

一部装甲が砕ける。

王都の兵士たちが歓声を上げる。

続いて森都エルシアナの精霊矢。

無数の光矢が流星のように空を昇り、敵砲門へ突き刺さる。

海都マレシアの艦砲も続く。

空そのものが戦場になった。

エリシアは城壁の上で叫ぶ。


「撃ち続けてください!」



ラグナロク外殻では、倒した機兵の残骸が赤い液体となって床へ吸い込まれていく。

再利用されている。

フィリアがそれを見る。


「長期戦は不利」


レナが頷く。


「つまり中心を叩く」


その時、外殻の一部が開いた。

巨大な縦穴。

下へ続く通路。

まるで誘うように。

レナが嫌そうな顔をする。


「罠の匂いしかしない」


中へ入る。

壁は脈打ち、通路は自ら形を変える。

左右に並ぶ無数の赤い眼。

誰かに観察されている感覚。

パウがノヴァの背に乗った。

怖かったらしい。

レナが小声で言う。


「……ここ嫌い」


フィリアも珍しく同意した。


「私も」


通路全体に声が響く。

静かで、古く、圧倒的な声。


「ようこそ」


空気が震える。

壁の眼が一斉に開く。


「第四は敗れ、第三も散った」

「第二と第一が直々に迎えよう」


レナが立ち止まる。


「え? 二人いるの?」


フィリアの顔が険しくなる。


「最悪」


ノヴァは耳を立てる。

叩く相手が二体。

少し忙しい。

通路が突然裂け、前方で二つに分かれる。

左は白い光。

右は黒い炎。

声が続く。


「選べ」

「白には秩序」

「黒には破壊」

「どちらも君たちの終わりだ」


レナが剣を肩に乗せる。


「感じ悪いクイズね」


フィリアは即答した。


「分かれる」


レナが振り向く。


「え?」


フィリアはノヴァを見る。


「時間がない」


ノヴァも頷くように一歩進んだ。

レナは頭を抱える。


「まさかの別行動!?」


左の白光路へ、フィリア。

右の黒炎路へ、レナ。

そして中央の壁をぶち抜き、まっすぐ進むノヴァ。


「ちょっと待って中央なかったわよね!?」とレナの声が響く。


ノヴァには関係なかった。

最短距離が中央だった。

星の城の奥で、何か巨大な気配が目を覚ます。

第一観測者。

そして、まだ姿を見せぬ第二観測者。

決戦が始まる。




通路は脈打ち、壁は生き物のようにうねる。

三方向へ分かれた戦場。

レナは黒炎路へ。

フィリアは白光路へ。

ノヴァは壁を破って中央突破。

パウは――。

しばらく考えた末、ノヴァの背中にしがみついていた。

賢明だった。


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