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50話 天獄城ラグナロク


名称:天獄城ラグナロク


古文書の最後の頁。

そこに記されていた名。

天獄城ラグナロク。

観測者たちが最後に使う、星間侵攻要塞。

世界を包み、地表の生命力を吸い尽くし、次の世界へ渡るための城。

王女エリシアの顔色が変わる。


「王都だけの話ではありませんね……」


老人学者は泣きそうだった。


「大陸ごと終わります」


レナが机を叩く。


「軽く言わないで!?」


皆が深刻になる中、ノヴァは窓辺に座って空を見ていた。

巨大要塞。

星の向こう。

世界規模。

そして思った。

遠い。

レナが気づく。


「何その顔」


ノヴァはじっと空を見る。

遠い敵は、走って行けない。

それが不満だった。


王城会議室。

地図ではなく星図が広げられる。

フィリアが静かに言う。


「落ちる前に壊すしかない」

「地上に着いたら終わる」


レナが腕を組む。


「で、どうやって空の上まで行くの?」


沈黙。

誰も答えられない。

その時。

エリシアが思い出したように顔を上げる。


「王家の地下封庫に、一つだけあります」

「古代転移装置が」


レナが目を見開く。


「なんで今まで言わないのよ!」

「誰も起動できなかったので……」


全員の視線がノヴァへ向く。

ノヴァは肉を食べていた。

嫌な予感がした。


王城地下、何重もの封印扉の先。

巨大な円形空間。

中央に、青白く輝く古代魔法陣。

柱には竜文字。

床には星座。

天井には世界樹の絵。

フィリアが目を細める。


「かなり古い」


エリシアが説明する。


「初代王が“天より来る災厄に備えよ”と残したそうです」


レナがノヴァを見る。


「……つまり?」


フィリアがあっさり言う。


「触って」


ノヴァの耳が寝た。

またそれか、と思った。

ノヴァが魔法陣の中心へ歩く。

前足を上げる。

ぺし。

一瞬、沈黙。

次の瞬間。

装置全体が白く発光した。

柱が回転し、床の星座が動き出す。

天井の絵が本物の空へ変わる。

風が吹き上がる。

レナが叫ぶ。


「やっぱりそれで起動するの!?」


フィリアは少し頷いた。


「予想通り」


光の柱が空へ伸びる。

これで天獄城ラグナロクへ跳べる。

だが片道かもしれない。

危険も未知数。

王女エリシアはノヴァたちの前に立つ。


「お願い致します」


レナは剣を背負う。


「まあ、行くしかないでしょ」


フィリアは無言で装備確認。

パウはなぜかヘルメットを被っていた。

ノヴァは空を見上げる。

星の向こうにいる敵。

走れないなら――飛んでいけばいい。

光の柱が、彼らを包み込んだ。



白き光の柱が王城地下から天へ伸びる。

その中心で、ノヴァたちの姿がゆっくりと浮かび上がっていく。

レナは剣を握り、歯を見せて笑った。


「宇宙とか聞いてないんだけど!」


フィリアは淡々としている。


「今、聞いた」


パウはヘルメットの中で揺れていた。


「ぱううう……」


ノヴァは前足を踏ん張り、ただ上を見ている。

星の向こうにいる敵。

そこへ行く。

それだけだった。


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