49話 着弾グランド・ノヴァ
次の瞬間。
白き巨星が竜ごと飲み込んだ。
閃光。
音が消える。
世界が白になる。
数秒後、遅れて轟音が王都を揺らした。
フィリアの氷防壁が軋む。
レナは地面にしがみつきながら叫ぶ。
「毎回規模更新するのやめてぇぇ!」
光が収まる。
広場の先、城壁外側一帯が巨大な盆地になっていた。
だが王都本体は無傷。
ドラグノスの姿はない。
赤い気配も消えた。
王都に静寂が戻る。
やがて、誰かが拍手した。
一人。
二人。
十人。
百人。
歓声が広がる。
「勝った!」
「助かった!」
「白き守護狼だ!」
レナは立ち上がり、胸を張る。
「だから私もいたって!」
今度は少し拍手が増えた。
「増えた!」
空から何か落ちてきた。
白いもふもふ。
ノヴァだった。
レナが反射で走る。
「はいはい毎度ぉぉ!」
どさっ。
無事キャッチ。
そのまま二人で転がる。
ノヴァはレナの腹の上でぐったりしていた。
目だけ動く。
王城の方を見る。
食堂の方向だった。
レナが笑う。
「はいはい、ご飯ね」
その後、王女エリシアが広場へ降りてきた。
人々の前で、ノヴァへ深く頭を下げる。
「どうか、この国にいてください」
「あなたがいるだけで、多くの命が救われます」
周囲が静まる。
レナもフィリアも黙った。
ノヴァはゆっくり起き上がる。
王女を見つめる。
少し考える。
そして。
ぺし。
頭に肉球。
エリシアは微笑む。
「……承諾、と受け取ります」
王都中が歓声に包まれた。
しかし
その夜。
祝宴の最中。
ノヴァの耳がぴくりと動く。
遠く。
ずっと遠く。
空のさらに上。
何か巨大なものが、こちらを見た。
月の裏側から覗くような、冷たい視線。
フィリアも同時に顔を上げる。
「……来る」
レナが肉をくわえたまま聞く。
「何が?」
窓の外。
星空の一角が、赤く瞬いた。
次の敵は――空の上ではなく、星の向こう側にいた。
祝宴の音楽が止まったのは、一瞬だった。
誰もが気づいたわけではない。
だがノヴァとフィリア、そして一部の魔術師たちは同時に空を見上げていた。
星空の一角。
赤く瞬いた点が、今度は消えずに残っている。
まるでこちらを見つめる目だった。
レナは骨付き肉を持ったまま窓辺へ寄る。
「……嫌な予感ランキング更新ね」
フィリアは低く答える。
「同意」
その夜のうちに、王城の天文塔へ全員が集められた。
巨大な望遠鏡。
古い星図。
慌てる学者たち。
王女エリシアが指示を飛ばす。
「観測記録を全部出してください」
老人学者が震える指でページをめくる。
「古文書に……あります」
「赤き星が目覚める時、門ではなく天が裂ける」
レナが顔をしかめる。
「スケール上げるの好きね、敵側」
フィリアは星図を見つめる。
「近づいてる」
部屋の空気が凍った。
落ちてくるもの
赤い星は、星ではなかった。
巨大な物体。
ゆっくりと、この世界へ降下している。
外殻は赤黒い岩。
その表面に無数の紋章。
中心には脈打つ光。
王都上空に投影された魔術映像を見て、兵士たちがざわめく。
「隕石……?」
フィリアが否定する。
「要塞」
レナが即答した。
「もっと嫌だった!」




