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41話 観測者登場


最後の鎧兵が崩れた瞬間。

塔の方角から声が響いた。

男とも女ともつかない、滑らかな声。


「ようこそ、白き核」


街全体に響く。


「待っていたよ」


レナが顔をしかめる。


「趣味悪い歓迎ね」


フィリアの瞳が鋭くなる。


「観測者」


声は笑った。


「君たちがどこまで抗えるか、見せてもらおう」


すると赤塔の光が強まる。

王都のあちこちから悲鳴が上がった。

家々の中にいた人々の魔力まで吸われ始めたのだ。

レナが走り出す。


「喋ってる場合じゃない!」


フィリアも続く。

ノヴァはすでに先頭だった。

大通りを疾走し、屋根を飛び、噴水を越える。

赤塔へ一直線。

その小さな背に、白銀の幻影が重なる。

王都の人々が窓越しにそれを見る。

誰かが呟いた。


「……白い狼だ」


別の誰かが言う。


「助けに来てくれたのか」


赤塔の根元へ辿り着く。

そこには巨大な門があった。

生き物の口のように脈打つ、赤い扉。

中央に目の紋章。

フィリアが低く言う。


「中に本体がいる」


レナが剣を構える。


「じゃあ壊すだけ」


ノヴァは前足を上げた。

慣れた動作だった。

だがその時。

扉が自ら開いた。

中の闇から、拍手が聞こえる。

ぱち、ぱち、ぱち。


「素晴らしい」


細身の人物が現れた。

黒衣。

白い仮面。

背中には赤い翼のような光。


「私は第四観測者、セラフィム」


仮面の奥の赤い瞳が、ノヴァを見下ろす。


「君を解剖しに来た」


王都の石畳を赤く染める光の中、黒衣の人物が拍手をやめた。

白い仮面。

細い体。

背中に揺らめく赤い翼。

第四観測者、セラフィム。

その声は穏やかだった。


「安心してほしい」

「苦痛は最小限にする」


レナが即答した。


「安心材料ゼロ!」


セラフィムの仮面に、無数の赤い線が走る。

まるで目玉が増えていくようだった。


「興味深い」

「幼体のまま神核を保持」

「肉球接触による概念破砕」

「食欲過多」


ノヴァの耳がぴくりと動く。

最後の一行だけ余計だった。

フィリアが前へ出る。


「見過ぎ」


冷気が広がる。

空気が白く染まり、石畳に霜が走る。

セラフィムは楽しそうに首を傾げた。


「氷姫も健在か」

「良い観測日和だ」


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