37話 氷喰い②
ノヴァはその場で座り込んだ。
レナが慌てる。
「ちょっと、休憩!?」
違った。
ノヴァの周囲に白い魔力が集まり始める。
雪が浮く。
氷片が空へ舞う。
空気が震える。
フィリアが目を見開いた。
「これは……上空座標固定型」
レナが振り向く。
「分かるように言って!」
「大技」
「最初からそう言って!」
ノヴァは空へ向かって咆哮した。
その声に応えるように、雲が渦を巻く。
北天氷域の空が割れ、白い光点がいくつも現れる。
流星だった。
だが普通の流星ではない。
一つ一つが氷塊の星。
尾を引き、白炎をまとい、空から落ちてくる。
レナが口を開ける。
「……え、なにこれ」
フィリアが静かに言う。
「メテオ・ノヴァ」
最初の一撃が落ちた。
どごぉぉん!!
母体の前脚付近に着弾し、雪原が丸ごと吹き飛ぶ。
続いて二発、三発、十発。
白き流星群が次々と降り注ぐ。
黒い群れは着弾の衝撃で消し飛び、氷喰いたちは蒸発し、雪山ごと削られていく。
母体が悲鳴のような咆哮を上げた。
六本脚で逃げようとする。
遅い。
最大の流星が、真上に現れた。
他の数倍。
小さな月のような白い塊。
母体が核を赤く光らせ、防御障壁を展開する。
フィリアが首を振る。
「無駄」
流星落下。
衝突。
音が遅れてやってきた。
閃光。
衝撃波。
吹雪。
視界が真っ白になる。
レナは雪に伏せながら叫ぶ。
「規模が毎回おかしい!!」
数分後。
吹雪が晴れる。
そこには巨大なクレーターがあった。
母体の姿はない。
核も、脚も、黒結晶も、跡形もなく消えていた。
周囲の氷喰いも全滅。
雪原だけが、静かに煙っている。
レナは呆然と立つ。
「……勝った?」
フィリアは頷く。
「地形ごと破壊した」
ノヴァはふらりと一歩よろけた。
レナが駆け寄る。
「やっぱり来た!」
ばたり。
ノヴァはその場に倒れ、四肢を投げ出した。
目は開いている。
でも動かない。
パウが心配して近づく。
「ぱう……?」
フィリアが診る。
「魔力切れ」
レナが安堵する。
「びっくりさせないでよ……」
その瞬間。
ノヴァのお腹が鳴った。
ぐぅぅぅ。
レナは空を仰いだ。
「結局それなのね!」
三人と一匹は宮殿へ戻る。
レナがノヴァを抱え、フィリアが前を歩き、パウが後ろで跳ねる。
雪原の向こうには、巨大なクレーター。
後にそこをこう呼ぶことになる。
――星喰いの穴。
そしてその原因は、今日も晩ごはんのことしか考えていなかった。
北天氷域の宮殿へ戻ったその夜。
食堂には、過去最大級の夕食が並んでいた。
焼き肉。
煮込み肉。
魚の丸焼き。
シチュー。
山盛りのパン。
レナが腕を組む。
「これだけ食べれば回復するでしょ」
ノヴァは椅子の上でぐったりしていた。
目だけが料理を追っている。
体力ゼロ。
食欲だけ満点。
フィリアがスープを差し出す。
「食べさせる?」
ノヴァの耳が立った。
プライドと空腹が激突する。
三秒悩み、口を開けた。
レナが吹き出す。
「欲望に負けた!」




