表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
35/125

35話 教育係のノヴァ&平和が崩れる日

レナが起き上がった瞬間、食堂の方から音がした。

がしゃん。

どたどた。

ぱう!

嫌な予感。

走って向かうと、そこには惨状が広がっていた。

保存肉の棚が倒れ、魚の箱が開き、床には氷片が散乱している。

中央で、パウが肉をくわえて走っていた。

フィリアが追いかけている。


「待って」


レナが叫ぶ。


「声に感情がないのに追跡は本気!」


ノヴァは入口でその光景を見ていた。

そして静かにパウの前に回り込み、前足を上げる。

ぺし。

パウの頭に軽く肉球。

毛玉はその場でころんと転がり、肉を落とした。

一瞬で制圧した。




それから数日。

パウは宮殿で暮らし始めた。

だが落ち着きがない。

走る。

跳ぶ。

物を倒す。

勝手に食べる。

レナが頭を抱える。


「子育てって大変……」


フィリアは真面目に記録していた。


「成長速度、予測以上」


ノヴァは黙ってパウを見ていた。

そしてある日、雪原へ連れ出した。




広い雪原。

ノヴァは前を歩く。

パウは後ろをぴょこぴょこついていく。

レナとフィリアは少し離れて見守っていた。

ノヴァは足跡を残さず雪を進む。

静かに。

沈まず。

風に紛れるように。

パウも真似する。

ずぼっ。

埋まった。

レナが笑い転げる。


「才能ゼロ!」


パウは悔しそうに雪から這い出し、また挑戦する。

ノヴァは振り返らない。

ただ歩き続ける。

背中で教えるタイプだった。

異変の兆し

夕方。

訓練を終えて戻ろうとした時。

ノヴァの耳が立つ。

フィリアも空を見る。

レナが気づく。


「なに?」


北の地平線。

雪煙の向こうに、黒い線があった。

最初は小さく。

だが徐々に増える。

一つ。二つ。十。百。

群れだった。

巨大な影の群れが、雪原を埋め尽くして進んでくる。

フィリアの顔色が変わる。


「……氷喰いだ」


レナが聞き返す。


「なにそれ」

「氷域の災害。なんでもいいから、食べるほど増える魔獣の群れ」


嫌な説明だった。




影が近づく。

狼のような姿。

だが全身は黒い結晶。

口だけが赤く光っている。

先頭だけでも数十。

後方は見えない。

レナが剣を抜く。


「また数で来るタイプ!?」


フィリアは冷気を纏う。

ノヴァは前へ出る。

その隣に、パウも並んだ。

小さな体で精一杯唸る。


「ぱう……!」


レナが目を丸くする。


「え、やる気?」


パウはノヴァを見る。

ノヴァは少し考え――前足で頭をぺし。

後ろへ転がされた。

まだ早い。

そういう意味だった。



黒い群れが迫る。

雪原が震える。

冷たい風が唸る。

レナは笑った。


「平和、三日しか持たなかったわね」


フィリアは静かに頷く。


「今回は数が多い」


ノヴァの瞳が白く光る。

食堂を荒らされる前に止める。

理由としては十分だった。

次の瞬間。

ノヴァが雪原を駆ける。

その小さな体に対し、迫る黒い群れは津波のようだった。

牙。

爪。

赤く光る口。

数百はいる。

普通なら逃げる光景。

だがノヴァは速度を落とさない。

レナが後ろで叫ぶ。


「一匹ずつ相手にしないでよ!?危険だから!」


ノヴァは思った。

なら、まとめてやる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ