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34話 平和


三人は壊れた宮殿跡へ戻った。

柱は折れ、壁は崩れ、立派だった城は見る影もない。

レナが口笛を吹く。


「派手に壊れたわね」


フィリアは少し落ち込んだ顔をした。


「……掃除が大変」


そこなのか。

ノヴァは瓦礫の上へ飛び乗り、周囲を見回す。

住めなくはない。

だが食堂が壊れていた。

それは重大問題だった。

フィリアが両手をかざす。

崩れた氷片が浮かび上がり、自動的に積み直されていく。

柱が伸び、壁が繋がり、床が再生する。

レナが驚く。


「便利すぎる!」

「昨日の戦いよりこっちの方が難しい」


フィリアは真面目に言った。

ノヴァは工事の様子をじっと見ていた。

やがて前足を上げる。

ぺし。

壁の一部に触れる。

そこだけ妙に丸い窓になった。

レナが笑う。


「何したの?」


ノヴァは得意げだった。

デザインを変えてみただけである。


昼には簡易食堂が完成した。

焼いた肉。

保存魚。

温かいスープ。

三人は並んで食べる。

レナが言う。


「こうしてると普通の旅仲間なのよね」


フィリアが首を傾げる。


「普通ではないと思う」

「自覚あったの!?」


ノヴァはスープ皿に顔を突っ込んでいた。

普通かどうかは、食事に影響しない。


その時。

宮殿の外で、空気が震えた。

三人が顔を上げる。

遠くの雪原に、何かが落ちてきた。

どさっ。

軽い音だった。

レナが眉をひそめる。


「また空から?」


嫌な予感しかしない。

雪原へ向かうと、そこには小さな生き物がいた。

白い毛玉。

丸い耳。

短い手足。

青い目。

ノヴァをさらに丸くしたような、謎の獣。

それは起き上がるなり、ノヴァを見る。

数秒見つめ合う。

そして叫んだ。


「ぱう!」


勢いよくノヴァへ飛びついた。

ノヴァが雪に埋まる。

レナは吹き出した。


「新キャラ!?」


フィリアは真顔で観察する。


「……古代雪獣の幼生。絶滅したと思ってた」


毛玉はノヴァの上で満足そうに丸くなった。

ノヴァの耳だけが雪から出ている。

非常に不本意そうだった。



レナが毛玉を抱き上げる。


「かわいいじゃない」


毛玉は元気よく鳴いた。


「ぱう!」


フィリアが言う。


「名前はパウで」


レナは考える。


「……パウ?」


毛玉が嬉しそうに跳ねた。

決定らしい。

ノヴァは雪から抜け出し、じっとその様子を見る。

仲間が増えた。

しかもかなり騒がしいタイプ。



その夜。

再建途中の宮殿で、四人は暖炉を囲んでいた。

レナ。

フィリア。

ノヴァ。

そして膝の上で寝るパウ。

窓の外にはオーロラ。

レナが笑う。


「世界救った後にペット増えるって何なのよ」


フィリアは訂正する。


「家族」


ノヴァの耳がぴくりと動く。

少しだけ。

ほんの少しだけ。

悪くないと思った。


北天氷域の宮殿に、新しい朝が来た。

暖炉の火はまだ赤く、窓の外では雪が静かに降っている。

レナは毛布にくるまりながら目を開けた。


「……平和だ」


昨日まで世界滅亡だの王だの門だの騒いでいたとは思えない。

隣を見る。

ノヴァは丸くなって寝ている。

その上に、パウが乗っていた。

完全にクッション扱いである。


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