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33話 白閃の一撃


ゼノグラードの動き。

落ちる赤雷。

吹き荒れる風。

舞っていた雪片。

すべてが静止した。

蒼氷に包まれて。

空に突き出た王の巨体は、門ごと凍りついていた。

裂け目そのものまで凍結し、空に巨大な氷の傷跡が走る。

フィリアが膝をつく。


「……今!」


ゼノグラードの胸部装甲が、凍結の圧力で開く。

内部に赤い球体。

脈打つ心臓のような核。

だが大きさは家屋ほどある。

レナが叫ぶ。


「ノヴァ!!」


ノヴァは走った。

氷原を蹴る。

小さな体が白線となって駆ける。

背後には、かつてないほど巨大な白銀神狼の幻影。

星空すら覆う神話の影。

ゼノグラードの腕。肩。首。

凍った巨体を駆け上がる。

一直線に胸部へ。

王の赤い瞳がわずかに動いた。

間に合わない。

ノヴァは核の前で跳ぶ。

前足を振りかぶる。

レナが叫ぶ。


「決めなさい!!」


ノヴァの瞳が光る。

そして。

ぺし。

小さな肉球が、巨大な核に触れた。

静寂。

一秒。

二秒。

ひびが入る

核の中心に一点だけ、白い亀裂が走る。

そこから全方向へ無数の裂け目。

赤い光が漏れ、暴走し、膨れ上がる。

ゼノグラードの声が初めて乱れた。


「エラー……核……崩壊……」


次の瞬間。

王の全身が内側から砕けた。

腕。翼。角。装甲。

巨大な体が、空中で灰色の雪となって崩れ落ちる。

凍った門も巻き込み、赤い裂け目ごと粉々に砕け散った。

空が、閉じる。


赤雷は止み、風が戻る。

静かな夜空に、星がひとつずつ現れた。

ノヴァは落下する。

レナが全力で走る。


「またそれぇぇぇ!」


ぎりぎりで抱きとめ、雪の上へ転がった。

ノヴァは目を回していた。

フィリアは座り込んだまま、くすりと笑う。


「上手」


ノヴァはふらつきながら立ち、フィリアの前へ行く。

そして前足を上げた。

ぺし。

額に軽く肉球。

フィリアは嬉しそうに目を細めた。


「……姉として認められた?」


ノヴァは少し考え、首を横に振った。

レナが吹き出す。


「そこは厳しいのね!」




その後、夜明け。

崩れた氷原の中央で、三人は朝日を見ていた。

門は消えた。

王も消えた。

世界は救われた。

レナが伸びをする。


「で、これからどうする?」


フィリアは当然のように答える。


「一緒に旅する」


ノヴァの耳が寝る。

レナは笑った。


「決定事項なんだ」


遠くで風が吹く。

新しい朝だった。

王ゼノグラードが消え、門も閉じた。

北天氷域には、久しぶりの静けさが戻っていた。

風は穏やかで、空は青い。

白い雪原に朝日が反射し、世界がきらきらと光っている。

レナは大きく伸びをした。


「終わったぁぁ……」


その場に倒れ込む。


「三日は寝たい」


フィリアは真顔で答えた。


「一日は許可する」

「厳しい上司!?」


ノヴァはその横で、雪に顔をうずめて寝ていた。

戦いの翌日は、基本的に省エネである。


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