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来訪者


風が止む。

焚き火が小さく揺れる。

そして誰もいない空から、声が降ってきた。


「白き核よ」


低く、複数の声が重なったような響き。


「逃げ場はない」

「次に会う時、世界は終わる」


声は消えた。

レナが剣を抜く。


「脅し文句まで大物ぶってるわね……!」


フィリアは静かに立ち上がる。


「急ごう」


ノヴァは焼き魚をくわえた。

どんな危機でも、食事は持っていく主義だった。



翌朝。

三人は日の出と同時に出発した。

街道は北へ進むほど細くなり、やがて舗装も消えた。

土の道。

霧の森。

冷たい風。

春のはずなのに、吐く息が白い。

レナは肩をさすった。


「急に寒くない?」


フィリアは前を見たまま答える。


「門の影響」

「世界の温度がずれ始めてる」


レナは嫌そうな顔をする。


「規模が毎回でかいのよ」


ノヴァは元気だった。

寒い方が快適である。



昼頃。

森を抜けた先に、広い雪原が現れた。

まだ北天氷域ではない。

だが季節外れの雪が積もっている。

フィリアが立ち止まる。


「ここで少し鍛える」


レナが指をさす。


「今!?」

「今」


フィリアはノヴァを見る。


「あなた、力が強いだけ」


ノヴァの耳がぴくり。

またそれである。


「例えば、全部凍らせるのは簡単」

「でも必要な場所だけ凍らせるのは難しい」


そう言って、彼女は雪原へ手をかざした。

一筋の冷気が走る。

百歩先の一本の枯れ枝だけが凍った。

周囲の雪には一切影響がない。

レナが目を丸くする。


「器用すぎる……」


ノヴァは少し悔しかった。

フィリアがうなずく。


「やって」


ノヴァは前足を上げる。

集中。

冷気を一点へ。

放つ。

――どごぉっ。

枯れ枝どころか、周囲五十歩の雪原ごと巨大氷塊になった。

レナが笑い転げる。


「雑!!!」


フィリアは額を押さえた。


「そういうところ」


ノヴァは不満げだった。

結果的には凍っている。問題ない。



その時。

雪原の向こうに影が現れた。

人型。

ゆっくり歩いてくる。

黒い外套。

白い仮面。

手には長槍。

一人ではない。

十人。

足音もなく並んで近づいてくる。

レナが剣を抜く。


「また変なの来た!」


フィリアの目が冷たくなる。


「門番たち……もう地上に降りてきたか」


ノヴァは低く構える。

仮面たちは同時に槍を掲げた。

そして一斉に声を発する。


「白き核を回収する」


全員同じ声。

気味が悪い。



槍が飛ぶ。

黒い光をまとった十本が一直線に襲う。

レナが二本を弾く。

ノヴァが三本を噛み砕く。

残り五本。

フィリアが指を鳴らした。

空中で凍結。

槍ごと粉々に砕け散る。


「行くよ、妹」


ノヴァの耳が寝る。

まだ認めていない。

だが敵は来る。

仮面たちが一斉に突進した。

ノヴァは左へ。

フィリアは右へ。

白い冷気が二方向から走る。

交差した瞬間、雪原に巨大な氷の十字が刻まれた。

その中心で、仮面たちの動きが止まる。

全員、胸元だけ正確に凍らされていた。

ノヴァは思った。

……こういう使い方か。


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