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悪意の敗北


鐘を壊す。

今すぐ。

ノヴァは深く息を吸った。

体はまだ万全じゃない。

でも迷っている時間はない。

ラズが首を傾げる。


「何する気?」


ノヴァは答えず、鐘へ向かって走った。

小さな体に、白い魔力が集まり始める。

古代の鐘。

崩れゆく山。

笑う末弟。

そのすべてを、一撃で終わらせるために。

古代文字が赤く燃え上がり、鐘を包む結界が幾重にも重なった。

ラズは歯を食いしばり、両手を突き出す。


「壊させない!」


採掘場全体が揺れる。

天井から岩塊が落ち、支柱が悲鳴を上げる。

背後では崩落の轟音。

レナのいる坑道も、もう長くは持たない。

ノヴァは鐘の前に着地した。

小さな体。

傷だらけの足。

荒い呼吸。

それでも、瞳だけは静かに燃えている。

終わらせる。


ノヴァは四肢を踏みしめた。

大地へ爪を食い込ませる。

体内の魔力が逆流するように巡り、胸の奥へ集まっていく。

白銀の光が毛並みの一本一本から溢れ、周囲の空気が震えた。

雪のような粒子が舞う。

ラズが息を呑む。


「……なに、それ」


ノヴァは低く唸り、前足を一歩出した。

その瞬間。

背後に、巨大な狼の幻影が現れた。

星を喰らうほど巨大な白き神狼。

天井を突き抜け、山そのものより大きく見える幻。

採掘場の誰もが凍りつく。

ラズの顔から血の気が引いた。


「……フェンリル……!」


ノヴァは咆哮した。

そして技名を、魂で放つ。




――――ノヴァ・インパクト—―――




白き衝撃

前足が鐘へ叩き込まれる。

接触の瞬間、音が消えた。

次の刹那。

白銀の衝撃波が球状に炸裂した。

結界が一枚目から百枚目まで同時に砕け散る。

古代文字が光となって吹き飛ぶ。

鐘の表面に蜘蛛の巣のような亀裂が走る。

そして――粉砕。

巨大な青銅の鐘は、内側から爆ぜるように砕けた。

轟音。

衝撃が採掘場を駆け抜け、ラズは吹き飛ばされ柱へ叩きつけられる。

赤い魔力が霧散する。

同時に、山を満たしていた不吉な力も消えた。

背後でグラヴォルの咆哮が苦しげに変わる。

魔力供給が断たれたのだ。


揺れていた山が、ぴたりと静まる。

落ちかけていた岩塊が止まり、亀裂の進行も収まっていく。

坑道の崩落は寸前で止まった。

遠くからレナの声が響く。


「ノヴァァァ!!」


生きている。

その声に、ノヴァの耳が少しだけ動いた。

ラズは瓦礫の中で咳き込みながら笑った。


「……兄さんたちが負けるわけだ……」


立ち上がろうとして、膝をつく。


「こんなの……反則じゃん……」


ノヴァはふらつきながら近づく。

ラズは観念したように肩をすくめた。


「殺す?」


ノヴァはしばらく見つめた。

そして前足を上げる。

ラズが目を閉じる。

ぺし。

額に肉球。


「……え?」


ノヴァはそっぽを向いた。

帰れ。二度と来るな。

ラズは呆然としたあと、吹き出した。


「……ほんと変なやつ」


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