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フェンリル転生物語  作者: 隣の鈴木君
悪意を滅するために
19/19

悪意の兄弟の追加


坑道の奥は、息が詰まるほど暗かった。

ノヴァの足音だけが、湿った岩壁に反響する。

背後では轟音。

グラヴォルの突進。

岩が砕ける音。

レナの怒鳴り声。

急がなければ。

ノヴァは速度を上げた。


地下深部

坑道はやがて大きく開け、巨大な空洞へ繋がった。

古い採掘場だった。

天井は見えないほど高く、錆びた足場や崩れた昇降機が吊るされている。

中央には円形の台座。

その上に――鐘。

人の家ほどもある巨大な青銅の鐘。

表面には無数の古代文字。

ひび割れた箇所から赤い光が漏れている。

そして鐘の周囲には、倒れた鉱夫たち。

まだ生きている。

だが気を失っているようだった。

ノヴァが駆け寄ろうとした、その時。


「そこまでだよ」


少年の声。

鐘の上に、誰かが座っていた。

細身の体。

煤けた作業着。

鉱石のように灰色の髪。

年は十代半ば。

だが瞳だけが、赤かった。

ノヴァは心の中で思った。

また赤い目。

もう見飽きた。


三人目。

少年は足をぶらぶらさせながら笑う。


「兄さんも姉さんも、失敗したみたいだね」


兄さん。姉さん。

セレスとミレアのことだ。

ノヴァの耳が立つ。

少年は肩をすくめた。


「自己紹介しとこうか。僕はラズ。末っ子だよ」

ノヴァは深いため息をつきたくなった。

兄妹、まだいた。

ラズは楽しそうに続ける。


「鐘の調整してたら、街の方が騒がしくてさ。

 でも来てくれて助かった」

鐘を軽く叩く。

――ゴォォォン。

空洞全体が震える。

背後から、グラヴォルの咆哮がさらに大きく響いた。

レナが危ない。

ノヴァは低く構えた。

ラズは鐘から飛び降りた。

着地音が妙に軽い。


「僕、戦うの苦手なんだ」


笑顔のまま言う。


「でも罠を作るのは得意でね」


床が光った。

ノヴァの足元、古い採掘場の石床に魔法陣が浮かび上がる。

遅い。

跳んだ瞬間、地面が爆ぜた。

鉄杭が何十本も突き出す。

ノヴァは空中で体をひねり、二本を蹴って回避。

さらに鎖が飛ぶ。

足場から射出された鉤付き鎖が、獲物を絡め取ろうと襲いかかる。

ノヴァは柱の陰へ滑り込み、鎖同士をぶつけて絡ませた。

ラズが感心した顔になる。


「すご。ほんとに獣?」


ノヴァは答えない。

三歩で距離を詰める。

牙。

ラズは後ろへ跳び、鐘の陰へ隠れた。


「やっぱり近づかれると怖いなあ」


鐘を壊せ

ノヴァは理解した。

こいつを倒す必要は薄い。

鐘。

あれを壊せば終わる。

ラズもそれに気づいたらしい。


「そう来るよね」


ノヴァが鐘へ走る。

その瞬間、天井から鎖付きの鉄籠(てつかご)が落下した。

古い鉱石運搬籠だ。

回避。

二つ目。三つ目。

連続落下。

採掘場全体が罠になっている。

ラズは指を振りながら笑う。


「ここ、僕の遊び場なんだ」


ノヴァは苛立った。

本当に兄妹そろって面倒くさい。



その時。

背後の坑道から、巨大な衝撃音。

続いて、レナの叫び。

ノヴァの心臓が跳ねる。

次いで、岩盤が崩れる轟音。

坑道が崩落し始めている。

ラズはにっこり笑った。


「時間切れかもね。鐘が鳴るたび、山は崩れるようにしてあるんだ」


ノヴァの瞳が凍る。

街も。

レナも。

鉱夫たちも。

全部まとめて埋める気だった。

こいつは

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