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英雄の目覚めと、新たなる土地へ


十日目の朝。

宿の部屋に、静かな音がした。

もぐ。

レナは本を読んでいた顔を上げる。

もぐもぐ。

ベッドを見る。

ノヴァが起きていた。

しかも枕元に積んであった保存肉を、当然のように食べていた。


「……起きたの!?」


ノヴァはちらっと見る。

遅い。何か問題でも?という顔。


「十日寝て、最初にやることがつまみ食い!?」


ノヴァはもぐもぐ続行。

元気そうで何よりだった。

レナは笑いながら駆け寄り、抱きしめようとする。

ノヴァは避けた。


「避けるな!」


その後、結局捕まった。

もふもふの刑である。

騒ぎが落ち着いたあと、レナはふと気づいた。


「……あれ?」


ノヴァを床に下ろし、まじまじと見る。

前より少しだけ大きい。

ほんの少し。

抱えられるサイズなのは変わらない。

だが脚が伸び、胸元もしっかりしている。

ノヴァ自身も気づいたらしく、首を傾げた。

レナはにやりと笑う。


「成長期?」


ノヴァは嫌な予感がした。

その日のうちに街の子どもたちが集まり、壁に印をつけて身長測定会が始まった。


「昨日より大きい!」

「いや変わってない!」


ノヴァは心底うんざりした。




昼過ぎ。

ギルド長ガルドから伝書鳥が届いた。

レナが手紙を読む。


「西方の鉱山都市で、夜ごと鐘の音が響く。

 誰も鳴らしていない鐘が、山の奥から……」


レナは顔を上げた。


「面白そう」


ノヴァは思った。

嫌な予感しかしない。


「報酬は金貨百枚、追加で肉の権利交渉可」


ノヴァの耳が立った。

レナが笑う。


「行く?」


ノヴァは一秒で頷いた。

現金ならぬ現肉だった。




その夜。

窓辺で月を見ながら、レナがぽつりと言う。


「……ありがとね」


ノヴァは振り向く。


「街も、私も、何度も助けてくれて」


少し照れくさそうに笑う。


「でも次は、一人で無茶しないで。ちゃんと一緒に戦いましょ」


ノヴァはじっと見つめたあと、ゆっくり近づいた。

そして前足を上げる。

レナは身構える。


「ぺし、でしょ?」


ノヴァは違った。

その手を、彼女の膝にそっと置いた。

レナの目が丸くなる。

ノヴァは小さく鼻を鳴らした。

わかった。

そう伝えるように。

レナは少しだけ泣きそうな顔で笑った。


「……ずるいなあ、そういうの」




翌朝。

白き幼体フェンリルと剣士レナは、再び旅立つ。

次なる町へむけて

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