140話 漢字ラッシュ
ノヴァは黒板へ顔を近づける。
「うつ……?」
少し考える。
「……あお?」
胸を張る。
「うつあお?」
沈黙。
次の瞬間。
レナが吹き出した。
「新しい色みたいになった!!」
ゼルクが壁を叩いて笑う。
「はははは! 鬱蒼色か!」
フィリアが淡々と記録する。
「独創的誤読」
黒板が赤く点滅。
『不正解』
ぶぶーっ。
ノヴァ、膝から崩れる。
「つよい……」
レナが笑いながら肩を叩く。
「今回は数字じゃなくて漢字ね!」
賢者グラン・テスタは杖を鳴らす。
かつん。
『“うっそう”と読む』
『草木が生い茂り、暗くしげる様子だ』
ノヴァは真顔。
「……もり?」
『だいたい合っておる』
レナが拍手した。
「要約能力高い!」
ノヴァは頷く。
「じゃあ、もりでいい」
フィリアが即答。
「試験では不可」
ノヴァ、しょんぼり。
「きびしい」
賢者は黒板を消し、新しい文字を書く。
“煌々”
ノヴァ、即座に後退。
「むり」
ゼルクが笑う。
「逃げるな、戦え」
ノヴァは真顔で言った。
「これは、たたかいじゃない」
レナが腹を抱えて笑う。
「完全に別ジャンル認定!」
黒板には新たな二文字。
“煌々”
ノヴァは一歩下がったまま、警戒姿勢。
「……つよそう」
レナが笑いながら手を振る。
「今回はそんな怖くないって!」
フィリアは冷静。
「発光系漢字」
ゼルクが肩を震わせる。
「その分類は初めて聞いた」
ノヴァは黒板へ近づき、じーっと見つめる。
「なんか……ひかってる」
「きれい」
しばらく考え込む。
翼の先がぴこぴこ動く。
そして、ぱっと顔を上げた。
「……きらきら」
沈黙。
黒板が……一瞬だけ光った。
全員、止まる。
レナが目を見開く。
「え、今ちょっと反応した!?」
賢者グラン・テスタも眉を上げる。
『……厳密には不正解』
ノヴァ、しょんぼり。
「だめ?」
賢者は続ける。
『だが、本質は近い』
『“こうこう”と読む』
『明るく輝くさまだ』
フィリアが頷く。
「意味理解は高精度」
ゼルクが笑う。
「感覚で正面突破し始めたな」
アルヴェリアは優しく微笑む。
『良い感性だ』
レナは親指を立てる。
「きらきらで伝わるから実質勝ち!」
賢者が咳払いした。
『実質勝ちという採点は存在せぬ』
レナ、そっと目を逸らす。
ノヴァは胸を張る。
「ことば、よわい」
レナが吹き出す。
「また勝ってる側のセリフ!」
ノヴァは続ける。
「でも、なんとなく、わかる」
賢者は静かに頷いた。
『それも才能だ。だが言葉にする力も必要』
黒板には力強く刻まれている。
“轟々”
ノヴァは文字を見た瞬間、ぴたりと止まった。
「……わからない」
レナが驚く。
「ついに素直!」
フィリアが記録する。
「自己申告能力、向上」
ゼルクは笑う。
「諦めも成長だな」




