138話 加算
ノヴァは黒板を睨む。
「12たいの、てきが……12かい……?」
目がまたぐるぐる回り始める。
ぷしゅぅ……と湯気。
フィリアが淡々と告げる。
「再び限界」
ゼルクが笑う。
「ここからが本気だな」
ノヴァは拳を握った。
「……まけない」
黒板には無慈悲に書かれている。
“12×12=?”
ノヴァは目をぐるぐる回し、頭から湯気を出しながら固まっていた。
「12たいの、てき……」
「12かい……」
「おおい……」
レナが応援する。
「がんばれノヴァ! いける!」
ゼルクは笑いながら腕を組む。
「さて、どう出る」
その時。
ノヴァの湯気がぴたりと止まった。
目の回転も止まる。
しーん。
フィリアが告げる。
「思考安定」
ノヴァはゆっくり顔を上げた。
瞳がきらりと光る。
「……144」
黒板がこれまでで最大に輝いた。
『正解』
どぉぉぉぉぉぉん!!!
天井が開き、紙吹雪第四弾。
花火。
鐘。
どこからか歓声。
レナが飛び跳ねる。
「すごぉぉぉぉい!!!」
ゼルクが大笑いする。
「急に天才になったぞ!」
フィリアが即記録。
「計算能力、覚醒段階」
アルヴェリアは誇らしげに微笑む。
『見事だ』
賢者グラン・テスタも目を見開く。
『……なぜ分かった?』
ノヴァは首を傾げる。
「なんか、きこえた」
全員、停止。
レナが瞬きをする。
「え?」
ノヴァは耳を指差す。
「うしろで、だれかが」
「144って」
全員、ゆっくり後ろを見る。
そこには小声で答えを言っていた樹海王ベヒモア・シルヴァルド。
巨大な体を縮こませていた。
『……応援のつもりだった』
レナが叫ぶ。
「カンニング補助ぉぉぉ!!」
賢者は杖を鳴らす。
かつん。
しばし沈黙。
『……今回は不問とする』
ノヴァの翼がぴこっと動く。
「やった」
ゼルクが笑う。
「運も実力だな」
黒板に新たな文字。
“では最後の試練。13+29=?”
ノヴァ、真顔。
「……たす?」
レナが息を呑む。
「未知の属性来た!」
ノヴァはじっと見つめる。
「……たす」
「かける、じゃない」
レナが拳を握る。
「いける! 落ち着いて!」
フィリアは冷静。
「加算分野、初挑戦」
ゼルクは笑みを浮かべる。
「未知との遭遇だな」
ノヴァは指を折る。
途中で足の指も使う。
それでも足りず、翼を広げる。
「13……29……」
「いっぱい……」
頭からまた、ぷしゅぅ……と湯気。
レナが叫ぶ。
「落ち着いて! 桁はまだ少ない!」
突然、ノヴァが顔を上げる。
真剣な目。
「……かんたん」
全員、止まる。
賢者グラン・テスタが頷く。
『申してみよ』
ノヴァは胸を張り、堂々と言った。
「42」
沈黙。
次の瞬間。
黒板が黄金に輝いた。
『正解』
どぉぉぉぉぉん!!!
天井から紙吹雪第五弾。
今度は星まで降ってきた。
レナが飛び上がる。
「やったぁぁぁ!!!」




