136話 算数
ノヴァは勢いよく黒板の前へ出る。
「つぎ!」
「もっと、こい!」
レナが驚く。
「急にやる気になった!」
賢者も満足げに頷く。
『よろしい。では次だ』
黒板に新たな問題。
“8×8=?”
ノヴァ、固まる。
笑顔が消える。
「……しらない」
レナが崩れ落ちる。
「一問ごとリセットされるの!?」
ノヴァは拳を握る。
「でも、まけない」
「56、できた」
「つぎも、できる」
賢者が静かに頷く。
『その意志こそ学びの力だ』
ゼルクが笑う。
「戦闘より成長してるぞ」
ノヴァは黒板を睨む。
「8×8……」
「つよそう」
レナが吹き出す。
「数字を敵みたいに見るな!」
知識の間に、また新しい戦いが始まった。
黒板には無情に書かれている。
“8×8=?”
ノヴァはその前に立ち、じっと数字を見つめていた。
「8……8……」
数秒後。
目がぐるぐる回り始める。
レナが指差す。
「処理落ちしてる!」
フィリアが淡々と告げる。
「思考負荷、上昇」
ノヴァの頭の上から、ぷしゅぅ……と白い湯気が出た。
ゼルクが吹き出す。
「本当に煙が出るのか!」
アルヴェリアが心配そうに近づく。
『少し休ませるか?』
ノヴァはふらふらしながら首を横に振る。
「だいじょうぶ……」
「まだ、たたかえる……」
レナが笑う。
「完全に勉強を戦闘扱いしてる!」
ノヴァは黒板へ指を向ける。
ぷるぷる震えている。
「わ、わかった……」
賢者グラン・テスタが静かに頷く。
『申してみよ』
ノヴァは目を回したまま叫んだ。
「63………?」
沈黙。
風も止まる。
レナが顔を覆う。
「惜しいぃぃぃ!!」
黒板が赤く点滅。
『不正解』
ぶぶーっ。
どこからかラッパ音。
ノヴァ、膝から崩れ落ちる。
「つよい……」
フィリアが訂正する。
「数字です」
ノヴァは床に手をつきながら呟く。
「あと、ちょっとだった」
レナがうなずく。
「そう! あと1!」
ノヴァは顔を上げる。
「なら、ほぼかった?」
ゼルクが爆笑する。
「その理論は好きだ!」
賢者も口元を緩めた。
『努力点は与えよう』
賢者は杖で黒板を叩く。
かつん。
“ヒント:8が8こある”
ノヴァは真顔になる。
「8が……8こ……?」
また目がぐるぐる回り始めた。
レナが叫ぶ。
「ヒントでさらに混乱してる!」
その時、ノヴァは突然立ち上がった。
「わかった!」
全員、注目する。
ノヴァは拳を握りしめ、堂々と言った。
「8を、ぜんぶ、たおせばいい!」
レナが膝をつく。
「発想がずっと戦闘なのよ!!」
黒板の前で、ノヴァは目をぐるぐるさせながらも突然ぴたりと止まった。
頭の湯気も止まる。
静寂。
レナが息を呑む。
「……来る?」
フィリアが注視する。
「再計算中」
ゼルクは腕を組み、笑みを浮かべる。
「面白い答えを期待しよう」




