127話 戦わずして終了
ノヴァの確認
ノヴァは少し考えた。
「もう、たたかわない?」
『戦わぬ!!』
「おこらない?」
『怒らぬ!!』
「おどらない?」
砂に埋まったラメセス十三世が叫ぶ。
『それは私では!?』
誰も見なかった。
ノヴァはこくりと頷く。
白金の翼が消えていく。
止まっていた風が戻り、砂が流れ始めた。
レナがその場に崩れ落ちる。
「助かったぁぁ……」
フィリアが淡々と記録する。
「巨大敵対存在、説得完了」
アルヴェリアは笑った。
『説得……か?』
スコルピアはまだ土下座のまま言う。
『慈悲に感謝する、ノヴァ殿……』
ノヴァは首を傾げる。
「そんなに、こわかった?」
女帝は即答。
『はい』
全員、頷いた。
砂漠の民の間では、この夜の出来事が伝説となった。
“女帝を土下座させた白き小さな翼”
そしてノヴァ本人は、ぽつりと呟いた。
「……まだ、なにもしてない」
レナが全力で叫んだ。
「しなくていいのよ!!」
女帝スコルピア・レギナはまだ土下座したまま。
尾九本もぺたんと伏せ、完全降伏の姿勢だった。
周囲では砂嵐も収まり、星空が戻っている。
レナは座り込み、ようやく安堵の息をついた。
「終わった……今回は本当に終わった……」
ゼルクは笑いながら腕を組む。
「見事な幕引きだ」
フィリアは記録を続ける。
「交戦時間、短縮傾向」
その中心で、ノヴァは少しだけ頬をふくらませていた。
白金の翼も消え、いつもの小さな姿。
だが表情は珍しく不満げだった。
アルヴェリアが気づく。
『どうした、ノヴァ』
ノヴァは地面にしゃがみ込み、砂を指でつつく。
しょぼん。
しばらく黙っていたあと、ぽつりと言った。
「ひとになってから……ほんき」
「だせたこと、ない」
沈黙。
レナが瞬きする。
「……え?」
ノヴァはさらに小さな声で続ける。
「いつも、ちょっとで、おわる」
「すこし……ざんねん」
全員、固まった。
ゼルクでさえ笑みが止まる。
「今のが“ちょっと”か……」
フィリアが静かに訂正する。
「基準値不明」
スコルピア・レギナは土下座のまま震えた。
『あれで本気ではなかったのか……』
サンドバジリスは遠い目。
『砂漠、終わってたな……』
ノヴァは膝を抱えて座る。
「みんな、すぐあやまる」
「すぐ、おわる」
「もっと……たたかってみたい」
レナが慌てて立ち上がる。
「いやいやいや、それ被害が世界規模になるやつだから!」
ノヴァはむぅ、と口を尖らせる。
「でも……」
アルヴェリアが近づき、ノヴァの頭に手を置いた。
『本気を出さずに済むのは、悪いことではない』
『それだけお前が強く、そして加減できている証だ』
ノヴァは見上げる。
「……そう?」
『そうだ』
ゼルクが肩をすくめる。
「なら、いつか本気を出さねばならん相手を探せばいい」
レナが全力で否定する。
「探さなくていい!! 絶対に!!」
フィリアが頷く。
「同意」
ノヴァは少しだけ元気を取り戻し、立ち上がる。
「じゃあ……つぎ、さがす?」
レナが砂に倒れ込む。
「休ませてぇぇぇぇ!!」
ノヴァはその反応を見て、少し笑った。
「……やっぱり、これすき」
女帝との騒動も終わり、夜明けの光が砂丘を照らしていた。
レナは疲れ切って座り込み、ゼルクは伸びをし、フィリアは荷物を整えている。
ノヴァだけが元気だった。
砂丘の上に立ち、きらきらした目で振り返る。
「つぎ、どこいく?」
レナが顔を上げる。
「元気すぎるでしょ……」
ゼルクは笑う。
「回復速度が異常だな」




