125話 ノヴァの超絶な煽り
ノヴァ、首を傾げる
ノヴァは女帝をじっと見つめた。
少し考える。
そして、真顔で言った。
「……いまの、あなたじゃ」
「むりだと、おもうけど」
沈黙。
砂嵐が止まる。
月明かりすら気まずそうだった。
レナが両手で頭を抱える。
「言い方ぁぁぁ!!」
ゼルクが腹を抱えて笑う。
「直球すぎる!」
フィリアが淡々と記録。
「交渉不能会話、継続中」
アルヴェリアは遠い目をした。
『誰に似たのだ……』
スコルピア・レギナの六つの眼が順番に瞬く。
怒り。
困惑。
屈辱。
最後に、猛烈な闘志。
『……ほう』
『そこまで言うか、小娘』
尾六本が地面へ突き刺さる。
どごぉぉん!!
砂漠全域に亀裂が走った。
ノヴァは悪気なく続けた。
「でも」
「まだ、つよくなれる」
レナが固まる。
「煽ってるのか励ましてるのかわからない!」
フィリアが頷く。
「両立」
その言葉に、女帝の魔力がさらに跳ね上がる。
黒金の甲殻が剥がれ、内側から純紅の新装甲が現れる。
尾は九本へ。
背の光輪は三重化。
空の砂の月が二つに増える。
サンドバジリスが悲鳴を上げる。
『第三段階ぃぃ!?』
ゼルクが口笛を吹く。
「本当に強くなったな」
女帝が九尾を広げる。
ノヴァが拳を握る。
二つの砂月と白金の光が夜空でぶつかり合う。
ノヴァは最後に、ぽつりと言った。
「じゃあ、こんどこそ……おいで」
夜空には二つの砂月。
第三段階へ到達した砂海女帝スコルピア・レギナが、九本の尾を広げて君臨していた。
紅き新装甲。
三重の光輪。
一歩ごとに大地が割れる威圧。
まさに砂漠の支配者。
その前に立つのは、変わらず小さなノヴァ。
白金の翼だけが静かに揺れていた。
『来い、小娘!!』
『今度こそ貴様を沈める!!』
九尾が天へ伸び、二つの砂月が回転を始める。
空気が焼ける。
レナは防壁の後ろで叫ぶ。
「これ以上まだ何かあるの!?」
フィリアが即答する。
「ある」
ゼルクは笑う。
「毎回そうだ」
ノヴァは少しだけ首を傾げた。
女帝を見る。
空を見る。
二つの砂月を見る。
そして、自分の手を見つめた。
小さく握って、開く。
そのあと、ぽつり。
「……ほんの、すこしだけ」
「ほんき、だせるかな?」
沈黙。
世界が止まる
その言葉と同時に。
風が止んだ。
砂が止んだ。
回転していた二つの砂月すら、空でぴたりと静止した。
レナの髪も揺れなくなる。
「……え?」
フィリアの目が見開かれる。
「周辺現象……停止」
ゼルクの笑みが消える。
「空気が変わった」




