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123話 ノヴァは手加減する


女帝の甲殻が開き、内側から古代紋様が浮かび上がる。

巨大な魔力が砂漠全体へ広がった。

昼のように明るくなる。

フィリアが分析する。


「封印解除形態」


ゼルクが口笛を吹く。


「やるじゃないか」


ノヴァの目がきらきらする。


「いい」


女帝が構える。

砂漠中の砂が渦となり、天へ昇る。

超巨大な砂槍が無数に形成される。

ノヴァは小さく背伸びした。


「じゃあ、あそぼう」


レナが叫ぶ。


「遊びじゃないのよ!!」


女帝が全砲門のように砂槍を放つ。

空が埋まる。

ノヴァは笑っていた。


「やっと、ほんき」


封印解除形態となった砂海女帝スコルピア・レギナ。

空を埋め尽くす無数の砂槍。

三本に分裂した毒尾。

倍化した鋏。

脚部から噴き上がる雷砂。

砂漠そのものが牙を剥いたような光景だった。

レナが叫ぶ。


「これもう災害!!」


フィリアが訂正する。


「災害級生物」


ゼルクは楽しそうに笑う。


「さて、どう捌く」


女帝が咆哮する。


『砕けろォォ!!』


砂槍が一斉降下。

上空から数千本。

同時に毒尾三本が別角度から突き出される。

鋏が左右から閉じる。

足元では流砂が巨大な口のように開く。

完全包囲。

レナが顔を覆う。


「終わっ――」


ノヴァはその場から動かなかった。

まず、上空。

片手をひらり。

降ってきた数千本の砂槍が、全部進路を変えて空へ戻っていく。

流星群のように夜空へ消えた。

フィリアが目を細める。


「因果反射」


右から来た一本を指で弾く。

かん。

左の一本に直撃。

残る一本はノヴァが口でふっと息を吹いただけで、くるくる回って地面に刺さった。

レナ、硬直。


「息で!?」


巨大な鋏が左右から閉じる。

ノヴァは両手で受け止めた。

ぎりぎりぎり……。

そして、少し押し返す。

女帝の巨体ごと後ろへ滑っていく。

砂丘三つ分。

ゼルクが吹き出す。


「力負けしているぞ」


流砂がノヴァを飲み込もうと広がる。

ノヴァは下を見る。


「だめ」


ぺし。

足で軽く踏む。

流砂、固まる。

石畳のように整地された。

フィリアが記録する。


「地形矯正」


全攻撃終了。

砂漠に静けさが戻る。

女帝は信じられないものを見るように固まっていた。

ノヴァは服の砂をぱたぱた払い、首を傾げる。

そして、ぽつり。


「……よわ」


沈黙。

周囲の反応

レナが両膝をつく。


「言っちゃったぁぁぁ!!」


サンドバジリスは震える。


『終わった……女帝がキレる……』


ゼルクは腹を抱える。


「容赦がない」


アルヴェリアはため息。


『煽り方まで育ってしまったか』


スコルピア・レギナの六つの眼がぴくぴく震える。

怒り。

屈辱。

そして少しだけ涙目。


『……今の全力だったのだが?』


全員、固まる。

レナが小声で言う。


「なんか急にかわいそうになってきた……」


ノヴァも少し困った顔になる。


「……ごめん?」


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