114話 天竜降臨
岩壁が開き、山頂へ続く光の道が現れる。
空へ伸びる神秘の階段。
レナが拳を上げる。
「やっと進める!」
フィリアがまとめる。
「本日の勝因:暴力ではなく園芸」
ノヴァは少し考えて呟く。
「……なぐるより、らく」
全員が拍手した。
山頂の雲の中から、巨大な影が降りてくる。
翼。
角。
黄金の鱗。
アルヴェリアが息を呑む。
『まさか……天龍種!?』
ノヴァの目が輝いた。
「いい」
精霊王ガイアロックの試練を突破し、光の階段が空へ伸びていた。
その先。
雲海を裂いて降りてくる巨大な影。
黄金の鱗。
天を覆う翼。
山脈のような角。
一振りの羽ばたきで雲が消し飛ぶ。
アルヴェリアが息を呑む。
『天龍種……しかも王格だ』
ゼルクが低く構える。
「強いぞ」
フィリアも杖を握る。
「高位生命体、確認」
レナは少し後ずさる。
「今回マジでやばいやつでは?」
そんな中。
ノヴァだけが目をきらきらさせていた。
降下してくる黄金龍を見上げ、頬が少し緩む。
そして、ぽつり。
「たのしそう」
沈黙。
レナが振り向く。
「感想それ!?」
ゼルクが笑った。
「戦闘狂の顔だな」
フィリアが訂正する。
「純粋な好奇心」
アルヴェリアは誇らしげでもあり、不安でもあった。
『血筋か……』
黄金龍が山頂台地へ着地する。
ずしん。
大地が鳴る。
雪が舞い、光が反射する。
その瞳は威厳に満ちていた。
龍は一行を見渡し、最後にノヴァへ視線を止める。
『小さき者よ』
『我を見て恐れぬか』
ノヴァ、即答。
「うん」
少し考えて付け足す。
「つよそうで、たのしそう」
黄金龍、沈黙。
やがて龍は低く笑った。
『……面白い』
『人も獣も我を見ると震える』
『だが貴様は遊び場を見る目をしている』
レナが小声で言う。
「否定できない」
ゼルクが頷く。
「まさにそうだ」
黄金龍が尾を軽く振る。
ただそれだけで暴風。
巨岩が空へ舞い上がる。
ノヴァはその岩を片手で受け止め、ぽいっと横へ置いた。
龍の目が細くなる。
『やはり只者ではない』
ノヴァは少し前へ出る。
「やる?」
レナが頭を抱えた。
「交渉ゼロ!」
黄金龍は胸を張る。
『我が名は天覇龍アウレクシオン』
『この山頂を守る者』
『登る資格ある者のみ通す』
フィリアが確認する。
「つまり勝てば通れる?」
『そう単純ではない』
全員、嫌な予感。
アウレクシオンはノヴァを見つめ、言い放つ。
『我を満足させよ』
レナが叫ぶ。
「またそれ!?」
ゼルクがため息。
「山の連中は抽象的だな」
龍は続ける。
『全力で来い』
空気が変わる。
ノヴァの目がさらに輝いた。
「……いい」
ノヴァは翼を広げる。
白金の羽が舞う。
風が止まり、空が静まる。
小さく笑って、言った。
「ほんとに、たのしそう」
アルヴェリアが苦笑する。
『完全に火がついたな』




