対ガイアロック、試練の内容は?
ノヴァは先頭で進む。
岩場をぴょん。
崖をひょい。
雪原をさくさく。
レナは必死。
「待って! 普通の人の速度考えて!」
ゼルクは余裕。
フィリアは浮遊術で移動。
アルヴェリアは荷物を持ちながら悠々と進んだ。
中腹。
見晴らしのいい台地。
雲海が広がり、風が吹く。
静寂。
ノヴァは少し残念そうだった。
「なにも、ない」
レナが即答する。
「それが普通なの!」
その瞬間。
ごごごごご……。
地面が揺れた。
全員、真顔になる。
「来たな」
巨大な岩壁が左右に開く。
中から現れたのは――
顔だった。
山そのものの顔。
岩でできた眉。
木々の髭。
滝の涙。
山の精霊王ガイアロック。
低い声が響く。
『うるさい登山者め……昼寝しておったのに』
レナが頭を抱える。
「山まで喋るの!?」
フィリアが冷静。
「順当」
ノヴァは前へ出る。
「ここ、のぼりたい」
ガイアロックが鼻を鳴らす。
『ならば試練だ』
『我を満足させよ』
ゼルクがため息。
「また面倒なタイプか」
レナが剣を抜く。
「戦えば早い?」
だが精霊王は首を振った。
『戦いは飽きた』
『今求めるは――笑いだ』
沈黙。
ノヴァ、固まる。
「……え?」
山の精霊王ガイアロック。
山そのものの巨顔が、岩壁からこちらを見下ろしていた。
『我を笑わせた者のみ、頂へ進める!』
ノヴァは真顔。
「……なぐりたい」
レナが即座に頷く。
「わかる」
ゼルクも腕を組む。
「今回ばかりは同意だ」
フィリアは記録する。
「戦闘不能案件:ギャグ要求型」
レナが前へ出る。
「こういうのは勢いよ!」
咳払い。
両手を広げる。
「私の財布の中身より軽いもの、なーんだ!」
沈黙。
風だけが吹く。
ガイアロックは無表情。
『答えは?』
レナが小声で言う。
「……私の未来」
さらに沈黙。
ゼルクが目を逸らした。
「重い」
ゼルクが前へ出る。
「見せてやろう」
翼を広げ、格好よく回転。
着地しようとして石に滑った。
ずべしゃ。
完璧に転んだ。
レナが吹き出す。
「ださっ!」
だがガイアロックは無反応。
『事故では笑えぬ』
ゼルク、顔を伏せる。
フィリアが静かに前へ。
「論理的笑いを試す」
紙を広げる。
「山に登る者が三人います。二人が右へ、一人が左へ行きました。さて、誰が迷ったでしょう」
沈黙。
レナが言う。
「説明して」
フィリアが説明を始めた。
十分後。
全員眠そうだった。
ガイアロックも半目。
『長い』
全員失敗。
ガイアロックが鼻を鳴らす。
『終わりか?』
ノヴァが前へ出る。
小さな体。
真顔。
「やる」
レナが心配する。
「ノヴァ、笑いって難しいわよ?」
ノヴァはこくり。
「しってる」
ノヴァは精霊王の巨大な鼻先まで飛ぶ。
じっと顔を見る。
そして。
その岩の鼻に、小さな花を一本、ちょこんと挿した。
戻ってきて、一言。
「にあう」
沈黙。
全員、精霊王を見る。
岩の巨顔。
厳つい眉。
木の髭。
そして鼻に小花。
レナが吹き出した。
「だめ、じわじわくる!」
ゼルクも肩を震わせる。
フィリアまで口元を押さえた。
山、崩れるほど笑う
最初は無表情だったガイアロック。
だが。
口角がぴくり。
次の瞬間。
『……ぶっ』
『ぶはははははは!!』
大爆笑。
山全体が揺れる。
雪崩。
鳥の群れ飛翔。
遠くの滝が跳ねる。
レナが叫ぶ。
「笑いすぎて被害出てる!」
ひとしきり笑った精霊王は満足げに言った。
『よい! 実にくだらん!』
『通るがよい、花の使い手よ!』
ノヴァは首を傾げる。
「はなの、つかいて?」
ゼルクが笑う。
「新しい異名だな」




