表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
111/113

登場、深淵皇アビサロス


ノヴァは戻ってきて、少し満足そうに言った。


「うん」

「やっぱり、らく」


アルヴェリアは苦笑した。


『交渉より先に拳が出るな』


ノヴァは首を傾げる。


「でも、へいわ」


全員、否定できなかった。


深海のさらに奥。

誰も届かぬ暗黒から、二つの赤い眼が開く。

海竜の顔色が消える。


『……冗談だろ』


フィリアが静かに言う。


「まだ上がいる」


ノヴァの目がまた輝いた。


「いい」


海賊王の旗艦は彼方へ消え、海には歓声が満ちていた。

魚群の祝福。

イルカの跳躍。

オクトラーナの勝利ソング。

だが――

深海のさらに奥。

光の届かぬ暗黒に、二つの赤い眼が開いていた。

それだけで海水が震える。

神殿の柱にひび。

小クジラはぴたりと踊りを止める。

海竜は青ざめた。


『あれは……深淵の王……』


レナが息を呑む。


「今までのとは格が違う……」


ゼルクも表情を引き締める。


「久々に危険だな」


フィリアは静かに杖を握る。


「高エネルギー反応、計測不能」


その時。

ノヴァが前へ出た。

いつもの無表情。

いつもの小さな背中。

だが空気が違った。

白ぽむたちが自然と下がる。

海流が止まる。

周囲の光がノヴァへ集まり始める。

アルヴェリアが目を見開いた。


『まさか……』


ノヴァは暗黒を見つめ、ぽつりと呟く。


「久しぶりに………本気?」


沈黙。

レナが震える声で言う。


「疑問形なんだ……」


ノヴァの白金の翼がゆっくり広がる。

一枚。

また一枚。

翼が増えていく。

二枚。

四枚。

六枚。

やがて十二枚の光翼となり、海底全域を照らした。

ゼルクが息を呑む。


「初めて見る姿だ」


フィリアも珍しく驚いていた。


「出力制限、解除中」


ノヴァが一歩踏み出す。

その瞬間。

海流停止。

泡停止。

揺れる海藻すら静止。

時間が止まったかのような静寂。

レナが目を見開く。


「え……何これ……」


アルヴェリアは低く告げる。


『周囲の現象そのものを従わせている……』


暗黒が割れる。

現れたのは、海より巨大な異形だった。

竜のような頭部。

無数の触腕。

山脈のような甲殻。

瞳は血のような赤。

その咆哮だけで海底山脈が砕ける。

海竜が震えた。


『深淵皇アビサロス……!』


ノヴァはそれを見上げ――

ほんの少しだけ笑った。


「いい」


レナが叫ぶ。


「楽しそうなんだけど!?」


ゼルクは苦笑した。


「ようやく全力で殴れる相手だからな」


ノヴァは拳を握る。

白金の光が海を超えて空まで貫く。


「じゃあ……こわさないように、こわす」


フィリアが即座に訂正する。


「矛盾している」


アビサロスが全海域を呑み込む闇のブレスを溜める。

ノヴァは小さな拳を構える。

十二枚の翼が同時に羽ばたいた。

海そのものが後方へ吹き飛ぶ。

レナは叫ぶ。


「来る!!」


深淵皇アビサロス。

海より巨大な異形。

その咆哮で海底山脈を砕き、闇のブレスで海域ごと呑み込もうとしていた。

対するは、小さなノヴァ。

十二枚の光翼を広げ、拳を構える。

誰もが激戦を予感した。

レナは息を止め。

ゼルクは構え。

フィリアは防御術式を展開。

海竜は祈るように目を閉じる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ