VS深律獣バレノン
ノヴァは立ち上がる。
目がきらりと光る。
さっきまでの疲れ顔が消えていた。
「うん」
白金の翼が広がる。
神殿全体が光に包まれる。
「こんどは……なぐる」
レナが拳を握る。
「その顔、久しぶりに見た!」
アルヴェリアは誇らしげに笑う。
『やはり我が子はこうでなくては』
神殿の外。
海底の裂け目が開く。
暗闇の中から、巨大な影が浮上する。
島のような体。
青白く光る模様。
尾びれ一振りで津波級の潮流。
そして――
リズムよく左右に揺れていた。
レナが絶叫する。
「ほんとに踊ってるぅぅ!!」
ノヴァは拳を握りしめ、少し嬉しそうに言った。
「やっと、わかりやすい」
深海の裂け目から現れた巨体。
踊るクジラ――その名は、深律獣バレノン。
島のような身体。
青白く輝く紋様。
尾びれが振れるたび潮流が渦になる。
そして。
左右。
左右。
くるん。
完璧なリズムで踊っていた。
レナが叫ぶ。
「想像以上に踊ってる!」
ゼルクは顔をしかめる。
「しかも上手い」
フィリアが分析する。
「重心移動が極めて滑らか」
海竜が泣きそうな顔で説明する。
『あやつが踊るたび海流が乱れる!』
『魚群は巻き込まれ、船は迷い、珊瑚は倒れる!』
オクトラーナも触手を振る。
『私のライブ客まで流されるの!』
レナが頷く。
「今回はちゃんと被害あるわね」
ノヴァは前へ出る。
「おどるの、すき?」
クジラは低く鳴いた。
ぶぉぉぉぉん。
フィリアが通訳する。
「かなり好きらしい」
「踊ると気分が上がるとのこと」
ゼルクが呆れる。
「聞き取れるのか」
ノヴァは続けた。
「でも、めいわく」
クジラは一瞬止まり――
さらに激しく回転した。
どるるるる!!
巨大渦潮発生。
レナが吹き飛ばされる。
「聞いてないぃぃ!」
アルヴェリアが翼で全員を守る。
『交渉決裂だな』
ノヴァ、こくり。
「うん」
ノヴァの白金の翼が開く。
神殿の外海がまばゆく光る。
「じゃあ、たたかう」
その瞬間。
ノヴァが水中とは思えぬ速度で突撃。
一直線。
水が裂ける。
音すら置き去りにした。
レナが叫ぶ。
「速っ!?」
クジラの鼻先へ到達したノヴァ。
小さな拳を構え、軽く打つ。
こつん。
次の瞬間。
バレノンの巨体が後方へ吹き飛び、海底山脈を三つ貫通。
どごぉぉぉん!!
海全体が揺れた。
オクトラーナが拍手する。
『最高の入り!』
しかしバレノンはすぐ戻ってきた。
しかも――
さらにノリノリだった。
ぶぉぉん!!
体表の紋様が光り、周囲に無数の泡が発生。
泡は音符の形をしていた。
フィリアが目を見開く。
「強化形態」
ゼルクが苦笑する。
「踊って進化するな」
ノヴァは珍しく楽しそうだった。
「いい」
「つよい」
レナが気づく。
「完全にテンション戻ってる!」
アルヴェリアも笑う。
『やはり単純な相手が合うらしい』
ノヴァは両手を広げる。
周囲の海水が持ち上がり、巨大な球体となる。
その中心に白金の光。
海そのものが武器になる。
フィリアが呟く。
「新技の兆候」
ゼルクが距離を取る。
「巻き込まれたくない」
ノヴァは巨大クジラを見据え、小さく言った。
「おどるなら……もっと、ちいさく」
白金の光が爆ぜる。
海中全域が輝いた。
レナが目を覆う。
「今度は何!?」
白金の光が爆ぜた。
ノヴァの両手から放たれた輝きは、巨大クジラ・バレノンをまるごと包み込む。
海が昼のように明るくなる。
魚たちは目を丸くし、クラゲ照明は役目を失った。
レナが叫ぶ。
「攻撃じゃないの!?」
フィリアが観測する。
「変質系魔力反応」
ゼルクが距離を取ったまま頷く。
「嫌な予感しかしない」




