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躍るクジラ

数日後。

海底神殿ネレイアは正式に営業開始。

昼限定ライブ。

週一休演。

夜間静粛厳守。

海の生き物たちは観光客を案内し、海竜は警備隊長。

オクトラーナは満員の観客へ歌う。

王都からも客船が来るほどの人気となった。

ゼルクが呟く。


「また敵が職を得たな」


ライブ後。

オクトラーナはノヴァに特等席を用意した。

貝殻ソファ。

海藻ジュース。

真珠クッション。

ノヴァは座って頷く。


「いい」


レナが笑う。


「最近プロデューサーみたいね」


その時。

神殿全体が揺れた。

どごぉぉん!!

天井の砂が落ちる。

海竜が青ざめる。


『まさか……!』


フィリアが問う。


「何?」


海竜が震える声で答えた。


『深海のさらに下から、“踊るクジラ”が目覚めた……!』


レナが絶叫した。


「もう静かな生き物いないの!?」


“踊るクジラが目覚めた”という報告により、神殿は再び騒然としていた。

魚たちは逃げ回り、クラゲ照明は点滅。

オクトラーナはマイク貝殻を抱えて震えている。


『クジラ先輩はスケールが違うの……!』


海竜は頭を抱える。


『なぜ海もこうなる……』


レナは床に座り込んだ。


「もう嫌……海までイベント会場じゃない……」


ゼルクは深くため息。


「陸も空も海も終わっている」


フィリアは真顔でまとめた。


「世界全域、騒音傾向」


その時。

ノヴァがぽつりと呟いた。


「最近……騒がしい?」


全員が見る。

ノヴァは少し考え込み、続けた。


「戦うほうが……楽」


沈黙。

レナが目を見開く。


「わかる」


ゼルクも即答した。


「非常によくわかる」


フィリアも珍しく共感した。


「交渉案件のほうが複雑」


アルヴェリアは苦笑する。


『力で終わる敵のほうが単純だからな……』


ノヴァは神殿の柱にもたれ、小さく足を揺らす。


「まえは、たたかう」

「いまは、なおす、まとめる、しごとふやす」


レナが吹き出した。


「完全に中間管理職なのよ今のあなた」


フィリアが頷く。


「実績多数」


宝箱を観光大使化

鎧を劇場配属

大砲を祭り復帰

タコを昼公演制へ

ゼルクが腕を組む。


「戦士ではなく再就職支援家だな」


ノヴァはむっとした。


「わたし、つよい」

「なのに、ずっとそうだんされる」


レナは笑いながら肩を叩く。


「強い人ほど頼られるのよ」


ノヴァは少し考える。


「……めんどう」


全員同意した。


「そうだね」


どごぉぉぉん!!

神殿がまた揺れる。

床にひび。

遠くから重低音が響く。

ぶぉぉぉぉん……。

海竜が震える。


『来るぞ……!』


オクトラーナが叫ぶ。


『クジラ先輩の前座BGMだわ!』


レナが立ち上がる。


「もういい、今回は普通に戦いましょう!」


ゼルクが翼を広げる。


「賛成だ」


フィリアも杖を構える。


「久々に話が早い」


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