海底神殿ネレイア
青白く光る遺跡。
柱の上。
スポットライト代わりのクラゲ群に照らされながら、巨大な紫タコが八本足を広げていた。
観客席には魚、イルカ、カニ、海老。
総立ち。
タコが一曲終え、喝采が巻き起こる。
その時、タコがノヴァたちに気づいた。
触手でマイク貝殻を持ち、叫ぶ。
『新たな客人! 次の曲は君たちに捧げよう!!』
青白い遺跡の大広間。
柱の上には巨大な紫タコ。
八本の触手を広げ、貝殻マイクを握る。
周囲には熱狂する観客たち。
魚たちは尾びれを振り、イルカはジャンプ、カニはハサミを打ち鳴らしていた。
ノヴァは静かに前へ出る。
「まず、きく」
タコの目が輝いた。
『よくぞ言った!』
『我が名は深海歌姫オクトラーナ!』
レナが小声で言う。
「姫なんだ……」
クラゲ照明が暗くなる。
神殿全体が青く染まる。
オクトラーナが触手を振り上げた。
♪ あなたの心に〜 潮騒ひとしずく〜♪
声が響いた瞬間、水そのものが震えた。
神殿の柱に波紋。
魚たちはうっとり。
イルカは涙ぐむ。
レナが呆然とする。
「……本当にうまい」
ゼルクも認めざるを得なかった。
「圧倒的だ」
フィリアは分析をやめて聴き入っていた。
一曲目が終わる。
拍手と泡の嵐。
ノヴァはじっとしていた。
全員が見る。
やがて、小さく拍手。
ぱち。
ぱち。
オクトラーナ、感激。
『真に聴く者だ……!』
アルヴェリアが微笑む。
『ノヴァは誠実だ』
海竜が疲れた顔で囁く。
『腕前は認める……だが聞いてくれ』
その瞬間。
オクトラーナが叫ぶ。
『アンコールいくわよー!!』
観客大歓声。
「うおおお!」
「朝まで!」
「三十曲いける!」
海竜が崩れ落ちた。
『これなのだ……』
レナが顔を引きつらせる。
「被害内容、完全にライブ過多」
ノヴァは少し考え、柱の前まで飛んだ。
オクトラーナの目の前で言う。
「うまい」
オクトラーナ、照れる。
『まあ♡』
「でも」
空気が変わる。
「ねるじかん、いる」
沈黙。
観客も止まる。
フィリアが頷く。
「核心」
オクトラーナは触手を胸に当てた。
『……そんなこと、初めて言われた』
『皆もっと歌えと言うから……』
魚たちが気まずそうに目を逸らす。
イルカたちもペンライト代わりのヒレを下げた。
海竜が咳払いする。
『ほどほどがよい』
オクトラーナはしゅんとなる。
「……じゃあ、昼公演だけ?」
ノヴァ、こくり。
「あと、しゅういち、やすみ」
レナが笑う。
「労働環境まで整えた!」




