ノヴァがお怒りです
その時、また兵士が駆け込む。
「大変です!」
「地下倉庫から“喧嘩する椅子”が二脚――」
全員同時に叫んだ。
「もういい!!」
“喧嘩する椅子”二脚脱走未遂の報告で、兵士たちはまたも大混乱だった。
廊下の奥からは、木材のぶつかる音。
がたん!
どかん!
「脚を引っかけるな!」
「そっちこそ座面を寄こせ!」
レナが遠い目をする。
「椅子が口喧嘩してる……」
ゼルクはもう驚きもしない。
「この城は終わっている」
そんな中。
ノヴァがゆっくり歩き出した。
白金の翼をたたみ、無言。
そのまま王女エリシアと、王家の重臣たちの前で止まる。
全員が息を呑む。
ノヴァは小さな顔を上げた。
そして――
じぃっ。
真っ直ぐ見つめる。
かなり真剣な目。
レナがひそひそ言う。
「怒ってる……」
フィリアも頷く。
「珍しい」
一言
静寂の中。
ノヴァは短く、しかし重く告げた。
「管理……しっかり」
広間、凍結。
王女エリシアは背筋を伸ばした。
「……はい」
大臣たちも一斉に頭を下げる。
「申し訳ございませんでした!!」
ゼルクが吹き出す。
「王家が叱られている」
効果は絶大
ノヴァはさらに続けた。
「しまうなら、ちゃんと」
「だすなら、ちゃんと」
「はこも、よろいも、いすも、かわいそう」
エリシアは目を丸くする。
レナが感心した。
「ちゃんと怒るだけじゃなく筋が通ってる」
フィリアは記録係のように呟く。
「正論」
その日のうちに緊急会議が開かれた。
結果――
封印庫は全面見直し。
危険物と愉快物を分類
定期点検の実施
話せる遺物には会話担当を配置
歌いたい鎧にはステージ提供
宝箱には日光浴時間を設定
レナが笑い転げる。
「仕事増えすぎでしょ!」
ミミクロンは誇らしげだった。
「我は観光と兼任でよいぞ!」
椅子たちの処遇
喧嘩する椅子二脚は、事情聴取の結果――
「長年向かい合わせで置かれていたせいで仲が悪化」
と判明。
別々の部屋へ配置転換。
即解決。
フィリアが淡々と言う。
「環境要因」
ゼルクが呆れた。
「本当に何なのだこの国は」
王都の人々の間では、新たな噂が広がった。
「英雄ノヴァ様、王家を叱る」
「王族より偉いのでは?」
「でもかわいい」
エリシアは苦笑した。
「反論できません……」
アルヴェリアは娘を見て誇らしげに頷く。
『強さだけではない。立派だ』
ノヴァは首を傾げる。
「ん?」
祝、100エピソード!! いつも読んでくれてありがとうございます!!




