ベランダでの喫煙
真名と彼は一緒にベランダでタバコを吸った。真名のぎこちない喫煙の仕草に、彼は思わず吹き出した。真名はキョトンとして彼をみつめる。
「あんまり様にはなってないな。まあ吸いはじめだからしょうがないか。タバコの似合う女になりたいのか?昔はスレてるなんて言い方もしたんだがな」
「スレてる?なにそれ。女性差別的な発言じゃない?素直にカッコいいって表現じゃダメなの?」
「・・・なるほど、それは女性差別に当たるのか。それは気づかなかったな。真名はちゃんと学識がある賢い子だ。お父さんの自慢だよ」
「まあ、いいけど。私そんなんじゃないから」
彼は真名の以前の言葉を思い出した。仕事ばかりに精を出し、家庭を蔑ろにしているじゃないかという、あのキツイ言葉だ。仕事に対する真摯な思いは変わらない。しかし家族からみて蔑ろと表現されるような態度を取っていた自分を恥じた。
「今度から真名には言うべきことはチャント言うようにするよ。少し厳しい態度になるかも知れないが、覚悟しといてくれ」
「お父さんにそんなこと出来るのかしら?いつだって黙ったスタイルの男だと思ってたけど」
彼と真名はひとしきり話したところでタバコを消し、リビングに戻った。二人の心は複雑な模様を描いていた。お互いに思いやりに欠けていた所が多々あったからだ。彼は自室に戻る真名の背中をみつめながら、明日の仕事のことを思い出し、いかんいかんと頭を振った。夜が静かに家族を包んでいた。




