清子の変化
しばらく経ったある日、また真名がスマホをいじりながらリビングに入ってくるのを彼はみた。台所で夕食の用意をしていた清子はそれに気づき、一瞬準備の手をとめた。彼は清子の様子を伺っていた。また同じ過ちを繰り返すのではないかと、心臓が高鳴った。いつ怒声が飛んでくるかも分からない状況に、彼は事件が起こる気配を感じたのだ。
「あら?お友だちとラインでもしてるの?この間言ってた彼氏だったら、お母さんにも紹介して頂戴な」
「・・・あ、うん。考えとく」
清子は笑みを作って真名に話しかけていた。あの怒声は勢いを失っている。何か考えることでもあったのだろうか。彼は清子の態度が大きく変化していることに気づいた。あの事件以来、清子が真名を怒鳴ることはなくなった。反省の色が生活態度にみえた清子の姿をみて、彼は誇らしい気持ちになった。自分も変わらなければいけない。
真名がみていたスマホから視線を彼に移した。スマホをポケットに入れ、彼の正面に座った。
「鼻血痛かったでしょ?」
「ああ、ちょっとな」
真名は思い出すようにまた笑い出した。彼もつられて笑い出す。清子が夕飯をテーブルに運んできた。平和な家族の団らんが戻ってきたことに、彼は安堵の気持ちでいっぱいになった。




