青年との闘い
彼は青年を押しのけて真名の手を掴んだ。真名はそれに抵抗し、掴まれた手を振りほどこうとした。青年が割って入る。彼の身体は後ろに押しのけられた。中学生にもなるとたいそうな体力だ。
「オッサン、離せよ!真名も嫌がってるじゃねえか。ぶん殴るぞ」
「君には関係ない話だ。ちょっと黙っていてくれないか」
「離してよお父さん!私帰らないんだから」
その時、彼の顔面に青年の拳が飛んできた。彼は咄嗟に顔を腕でかばったが、時すでに遅し、思いっきり横っ面に痛みが走った。彼の足元はよろめき、一瞬頭が真っ白になった。次の瞬間、彼は興奮して青年の襟を掴み地面に叩きつけた。二人は取っ組み合いの形になった。周囲の人達は好奇の目で一部始終をみていた。真名が泣きながら二人の間に割って入る。
「もうやめて!私こんなこと望んでない。血が出てるじゃない。分かった、私家に帰るわ。達也お願いだからやめてちょうだい」
青年は掴んでいた手を離すと、真名をみつめた。彼も一旦落ち着いて、身体を起こすと距離を置いた。彼の鼻からは血が出ていた。青年の顔にも擦り傷が出来ていた。彼は真名の手を掴むと、車の方に連れて行こうとした。真名は青年の方をみていたが、やがて彼の顔に視線をやった。
「お父さん大丈夫?血出てるよ」
「ああ、大丈夫だ」
彼は真名に笑ってみせた。真名はそれをみて、涙をとめた。車に二人乗り込むと、彼はエンジンをかけた。血が気になりはしたが、今は興奮してそれどころではなかった。車が走り出すと、真名は窓の外をみていた。彼は前方だけをみて、青年の様子を伺おうともしなかった。




