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真名の隠れ家
「私にも一本ちょうだい」
真名は悪びれる様子もなく、達也に煙草をねだった。達也は軽く返事をすると、真名に煙草を手渡した。吸い慣れない真名の姿を、達也は面白そうにみている。視線が合った二人は、何が面白いというわけでもなく笑いあった。
部屋には空の缶ビールが散乱している。真名は達也の部屋に転がり込んでから、ビールを3本飲んだ。何もかもがどうでもよかった。家族のことを忘れたい。思い出すだけでも嫌だ。真名の気分は一向に晴れなかった。
「真名の親はどんな人なんだい?」
「何よ急に。野暮な質問ね、こんな時に。話したくもないわ」
「そっか。俺も同じだ。親なんて自分勝手な生き物で、子供を人形扱いしてやがる。あいつらの思う通りになんか生きてやるもんか。人生一回きり、言い成りになるなんてバカらしいぜ」
真名は深く同意を示して頷いた。達也はどこか寂し気な所がある。そんな雰囲気に魅かれたのだ。自分と同じ考え方、価値観。運命の出会いだと思った。二人でどこか遠くへ行きたい。誰も邪魔しない、自分たちを知らない人たちに囲まれて生活したい。真名と達也は再び缶ビールを飲んだ。夜は二人を最高の形で出迎えた。




