真名の家出
彼が気になって真名の部屋へ向かおうとすると、泣いていた清子がこちらをみつめた。その視線を振り払って、彼は真名の部屋の前まで行くとドアをノックした。案の定返事はない。
「真名、入るぞ?」
彼は思い切ってドアを開けた。真名は引き出しから洋服を引っ張り出して旅行鞄に詰め込んでいる最中だった。彼はそれをみて慌てた。真名はこちらも見向きもせず作業を淡々と進めている。
「真名、何してるんだ?どこへ行くつもりだ」
「お父さんには関係ない」
彼の心配とは裏腹に、真名の決意は固いように思えた。彼は真名が荷物を用意している様子をみつめながら、こんな時は無理矢理でも引き止めるのが父親なのだろうかと、心の中で意外と冷静に考えていた。
「真名、頼むから事情を話してくれないか?お父さんたちに悪い所があれば治す。話し合いをしてくれないか。心配なんだよ」
「嘘ばっかり!お父さんは仕事してればいいでしょ。家族のことなんて微塵も考えてないのは分かってるんだから」
彼は真名のその言葉に愕然とした。自分は確かに仕事が大切だ。しかし家族を蔑ろにしているとは思っていなかった。そう思われているとさえ知らなかった。思いやりが足りなかったのか。真名は寂しかったのかも知れない。その感情の表現が、反抗という形で現れたのだろうか。




