真名の友達に電話をかける
彼は朝方の街中を運転しながら今日の仕事のことを考えた。10時から得意先との会議が入っている。失敗するわけにはいかない案件だった。彼の胃がギュッと痛むのを感じた。隣りにいる清子は窓から外を見つめ、真名の姿を必死に探している。自分は娘がこんな状況になりながらも、仕事のことを考えている。清子に申し訳ないと同時に、そんな心が見透かされるのが恐かった。しばらく運転していると、清子がスマホを取り出した。
「真名の友達の番号を何人か知ってるの。ちょっとかけてみるわ」
「大丈夫か?こんな朝早くに電話なんて失礼じゃないかな。もう少し探して時間が経ってから電話したらいいんじゃないか」
「そんな悠長なこと言ってられませんよ。真名に何かあったらどうするつもり?あなたは心配してないかも知れないけど、私は心配でたまらないのよ」
「俺だって心配してないわけじゃない」
彼は仕事のことを考えていたことを隠すために、清子の言葉を強く否定した。清子はスマホを耳に当て、真名の友人に電話をかけ始めた。数人に電話をかけ、その度に清子が謝りながら真名の行方を聞いていた。そうして電話が終わるたびに落胆の表情をみせた。誰も真名の行方を知らないのだ。清子はスマホをダッシュボードに置くと、また窓の外をみつめていた。彼は仕事のことは考えまいとしたが、時間が気になってしょうがなかった。チラリと時計をみやり、真名のことを思った。どこで何をしているんだ。




