13/45
無力感
彼はリビングで一人ビールを飲んでいた。真名は部屋に閉じこもったままだし、清子は早々寝室に行ってしまった。何をするわけでもなく、彼の心は酔うことも出来なかった。真名に一体何があったのか。学校で友達と上手くいってないのか。勉強についていけないのかも知れない。心配は頭を巡り、彼は頬杖をついて深く考え込んだ。
清子に先程言われた言葉が心に残っている。自分は甘いのだろうか。こういう時はしっかり叱るのが父親の役目なのか。彼は自分が真名を叱ることを恐れた。一人娘のご機嫌伺いに囚われて、本当の思いやりを忘れているようだった。
彼は席を立ってベランダに出た。タバコに火を付けると、煙を一気に肺に入れた。いつもより旨く感じられたタバコは、彼の苦境を物語っているようだ。街中のマンションの8階からみる夜の景色は、殺風景と言っても過言ではない。空を見上げると月がちょうど満月だった。
リビングに戻ると、清子が椅子に座っていた。彼とは視線を合わさない。テーブルをみつめながら、清子は思い詰めていた。彼は思い切って話題をふった。
「真名のことを少し話し合おうか」
清子はテーブルから視線を上げたかと思うと、彼を睨んだ。




