真名の言い訳
彼は清子からの連絡を受け、早めに会社を後にして帰宅していた。清子は先程から落ち着かない様子だった。二人の時間が長く感じられた。真名は一体どうしてしまったのだろうか。清子が真名に連絡を入れた回数は、この日10回にも及んだ。LINEも既読にはなるが返信がない。清子と彼が時間を持て余していた時、玄関からドアが開く音が聞こえた。陽も暮れ始めた時刻のことだった。
真名は無表情でリビングに入ってきた。まるで、これから行われる演劇に心を閉ざしたかのように。清子が怒りを抑えた様子で真名に話しかけた。
「学校から連絡があったわ。真名、何か不満があるなら言ってちょうだい。お母さんたちが悪い所があったら治すから。何で学校をサボったの?」
「友達と勉強してたの」
真名はあからさまに嘘をついた。彼は黙って真名の様子を伺っていた。清子が彼に視線を向けてきた。父親として何か言うことは無いの?とでも言いたげだ。彼は無言で清子をみつめた。清子は我慢できず、真名を怒鳴った。
「嘘おっしゃい!真名、親に嘘を付くなんて、あなた気でも狂ったの?お母さんがどれだけ心配してるか分かってるの」
真名は表情を変えず返事をしなかった。彼とも視線を合わそうとはせず、虚ろな瞳は時計をみているようだった。この悪夢が早く過ぎ去ればいいのにと言わんばかりの態度だった。彼は大きくため息をついた。清子の手は震えていた。




