↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSして昔の声を取り戻したボクは女性シンガーの歌を熱唱したい!  作者: 武藤かんぬき
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/54

閑話――はじめての案件配信


「こんばんはー。みんなに歌声とどけたい、うたってみた系Vtuberの歌音ゆうひでーす」


 マイクに向かっていつも通りに挨拶をして、正面から自分を捉えているカメラを見つめる。チラチラと横目でコメント欄を見ると、挨拶を返してくれる常連さんや『初見』や『初視聴』と自己申告してくれている視聴者さんたちのコメントで読む間もなくコメントが下に流れていく。


 今日は自分のチャンネルではなく、なんとすとりーむらいぶの公式チャンネルでの配信なのだ。デビューした新人にPR配信を依頼してくれている企業さんからのオファーで、まだデビューしてそれほど時間が経っていない新人の僕に白羽の矢が立ったという訳だ。


「今日はミルキーウェイさんからひと月ぐらい前に発売された、サンダルフォンシリーズの新しいスマホを紹介します」


 コメント:天の川さんにはすとらいがいつもお世話になっています


 コメント:ゆうひちゃんはスマホ詳しいの?


「うーん、実はあんまり……この間、スマホを新しく買ってもらったばかりって感じですね」


 本当なら自信満々に詳しいと言いたいところだけど、僕は元から必要な機能を使えればいいやってタイプだから実はそんなに詳しくないのだ。ウソを言ってもすぐにバレるだろうから、見栄を張っても仕方がない。


 コメントで使っているスマホの機種名を尋ねられたけど、それは今度自分の配信で答えることにした。だって今日はミルキーウェイさんのスマホをアピールしないといけないのに、他社のスマホについての話題ばっかりになったりしたらダメだからね。打ち合わせでマネさんにも『気をつけてね』って釘をいっぱい刺されたし。


「それでは、製品を渡してもらったので開けていきましょう。外箱にスマホの写真が印刷されてるんですけど、このミントみたいなグリーンがかわいいですよね」


 コメント:それより、ゆうひちゃんの手がマジでちっちゃいな


 コメント:当たり前やろ、中学生やぞ


 コメント:黒ビニールの手袋の方が大きくてダブっとしてるのが、またかわいいね


「あのですね……僕の手じゃなくて、箱を見てください、ハコを!」


 そう言った僕の様子がおかしかったのか、笑っていることを示す『w』がいっぱい並んでいるコメントや笑顔の絵文字が連打されていた。いつもの配信なら僕の気分で時間延長ができるのだけど、今日は1時間って決まっているので無理やり先に進む。


「じゃあ、このテープを剥がしまーす。これが取れちゃってたら一度開けた商品っていうことになるのかな?」


 コメント:せやで。新品を買った人だけの特権だよ


 コメント:これを剥がすために新品しか買わないというこだわった人たちもいる


 コメントを読むに、誰にも触られてない新品スマホを使いたい人が何人かいるみたいだ。なんとなく気持ちはわかる、バッテリーも古くなってないから長く使えるらしいもんね。


 一応この案件のお話を引き受けたときに、あまりにも知識がない状態だとダメだと思って達也に基礎知識を教えて欲しいってお願いしたんだよね。そしたら『絶対そのままの状態の方がウケるだろうから、予習しようとしたりするなよ』って言われてしまった。


 達也が言うには、基本的に人間という生き物は教えたがりな性質を持っているらしい。幼い子どもにおもちゃの片付け場所を躾けるとき、親が『どこに片付けたらいいのか』を子どもに聞くことによって、教えたがりな習性を利用して『ここだよ』と子ども自らが親に教えることで覚えてもらう方法があるんだそうだ。


 なんで僕と同い年の達也がそんなことを知っているのか。昔からなんだけど、達也は変わった知識というか雑学を覚えていることが多い。どこで仕入れてくるんだろう、今度聞いてみるのもいいかもしれない。


 そんなことを思い出しながらスマホを触っていると、確かにコメントにいろいろとリスナーさんが豆知識を教えてくれている。その流れで指示されたゲームを起動してみたが、背景やキャラが精巧な分データの量が多いのか動きが止まったりカクカクとしているように見える。


「ええと、このゲームはすごく人気だと聞いていたのですが、このスマホだと滑らかに動かすにはちょっと力不足なのかもしれないですね。ちなみにメーカーの担当さんからの指示でこのゲームを動かしているので、安心してくださいね」


 コメント:急にマイナスプロモーションはじめたのかと思ったわ


 コメント:メーカーとしても購入してから目的のゲームが動かないって言われたら 

      困るだろうし。その前にこうして教えてもらえるのはありがたいわ


 コメント:杞憂民乙


 そもそも高い処理能力が必要なゲームをやりたいなら、それ相応の処理性能があるスマホを買ってねというメーカーさんの意見表明なのかもしれない。もちろん今回依頼してくれたミルキーウェイさんも高性能なスマホを作っているそうなので、お客さんのターゲットを明確化したかったのかな。


 次のゲームはさっきよりもスムーズに動くけど、やっぱり少しカクカクする。その次のゲームは引っかかりがない動きみたいに、全部で合わせて4つのゲームを遊んでみた。


「さ、参考になったのかな? とりあえず3つ目のゲームからは問題なく動いていたので、ゲームで遊ぶのが好きな人はこの結果を買うかどうかの検討材料にしてくださいね」


 コメント:麻雀ゲームでツモ切りばっかりするゆうひちゃんがかわいかった


 コメント:いやいや、野球ゲームでかなりタイミング外して空振りする姿もなかなか


 コメント:今度この子の配信見てみようかな、なんかほっとけない感じのする子だよね


 な、なんだか変なところばかりを褒められている気がする。仕方ないじゃんね、麻雀は全然知らないし野球ゲームも普段まったくやらないんだから。すとりーむらいぶ全体のチャンネルということで普段は僕のチャンネルを見てなかったり、初めて僕のことを知った人のコメントもちらほら見えるのだから、悪い印象を与えかねない言葉は書き込まないで欲しい。


「そ、それでは最後にメーカーの広報さんに、お話を伺いたいと思います。ミルキーウェイの澤さんです、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします。こんなにかわいい女の子に、一生懸命に当社の製品を宣伝してもらえて本当に嬉しいです」


 モニターの右側にゆうひちゃんのアバター、そして左側に実写の澤さんの姿が映っている。リアルで配信されている画面がここに映っているはずなので、おそらく視聴者のみなさんには現在こんな感じに見えているのだろう。


 澤さんは20代後半ぐらいの女性なんだけど、さっきからなぜか僕のことを微笑ましく見守っているような視線を向けてくる。例えるなら『はじめてお母さんのお使いをこなしているちっちゃい子に向けるような視線』とでも言えばいいだろうか。多分実年齢で比べても10歳ぐらい離れているので子ども扱いされるのは仕方がないのだろうけど、ちょっとだけ居心地が悪い。


「ええと、それではこのスマホについてお話を伺いたいのですが……大丈夫ですか?」


「あ、ごめんなさい。まだ小学生か中学生ぐらいなのに、頑張ってるなーって思わずジッと見ちゃいました」


 苦笑しながらそんなことを言う澤さんに、コメント欄が『やっぱりゆうひちゃん小さいのか』とか『リアルゆうひちゃんを見れるの羨ましいな』などのコメントがものすごい勢いでスクロールされていく。

 ぐぬぬ、まぁ仕方ないよね。中学生の女の子の体になっちゃったのは、僕が願ったとおりに声変わり前の自分の声を取り戻すのに必要なことだったんだろうから。僕にとって一番大事なのは声、それ以外は全部オマケなんだから甘んじてそれについての批評は受け取ろう。


 正直なところ会ったこともない人にかわいいとか言われても嬉しくはないけど、でも嫌われてたらそんな言葉を僕に言わないだろうから。悪い感情を向けられるより、好意を持ってもらえていると前向きに考えよう。配信者なんだから、絶対にファンになってもらえた方が活動的にもやりやすいはずだし。


 製品の売りである機能や、制作途中であったトラブルなどを面白おかしく話す澤さん。さすがにスマホを作る会社にお勤めされてるだけあって、僕みたいな素人よりもわかりやすくお話してくれたのでコメント欄も大変盛り上がった。


 最後に今日使ったスマホを僕にプレゼントすると言い出した澤さんに、本気で慌ててしまった。だってスマホって何万円もするものだし、僕のスマホは女子になってから親が急遽買ってくれたものだからまだ全然新しくて、機種変更する必要もない。


 さすがに申し訳なくなって遠慮していたんだけど、澤さんは全然引いてくれないどころかどんどん押し付けてくる。助けを求めるつもりで配信をスタジオの端っこで眺めていたマネさんに視線を向けると、苦笑しながら『受け取っておきなさい』と言うように頷いていた。

 もしかしてこれってサプライズで、知らないのは僕だけだったのかもしれない。心苦しいのは変わらないけど、せっかくもらったのだし今のスマホは壊れたときの予備にしようかな。データの移行は達也に教えてもらいながらやれば、なんとかできるだろうし。


 こうして好評のままに、僕のはじめての案件配信が終了した。遠慮する僕の様子がかわいかったとスタッフさんも含めて好評で、『次回もまたよろしくお願いします』と言ってもらえたのは素直にうれしかった。お世辞かもしれないけど、褒められると嬉しいよね。


 しかし今回は過密スケジュールだった。マネさんやスタッフさんたちが僕が何度も上京するのはいろいろと負担が掛かると考えてくれて、午前中にダンスレッスン。午後に配信の打ち合わせで午後6時30分から案件配信の本番と、休むヒマがなかったからね。


 ずっと動き回っていたせいか、マネさんが車で家まで送ってくれている間に寝落ちしてしまったのか、起きたら自分のベッドの上だった。父が運んでくれたのかと思ったら、マネさんがひょいと僕の体を抱き上げて部屋まで運んでくれたらしい。


 腕力マネさんというあだ名が事実だったと、思わぬところで知ることになってしまった。むやみにその力を振るうことはないだろうけど、できるだけ逆らわないように気をつけよう。


突如優希がかわいいかわいいとチヤホヤされる話が書きたくなりました。

飛ばしても特に問題ない話なので閑話としてアップします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。