ソウマとサカキ その2
○ソウマ
「俺もさ、この漫画好きなんだ」
走って三階の教室から校庭に降りたった僕は、その言葉が全く理解できなかった。
だって、その手にあるその漫画はさっきお前らが破いたせいでボロボロになっているんだから。
僕は下を向いてそいつから漫画を奪い返した。
「何で、こんなことをするの?」
思わず僕の口からそんな言葉が飛び出した。
もう限界だったんだ。
うっとうしいからという理由で僕たちに嫌がらせをしてくるこいつらの存在は僕にとってただの恐怖でしかなかった。
びくびくして教室で過ごすことが身についた。
それがまた気に食わないと言われる。
じゃあ、僕はどうしたら?
「もう勘弁してよ」
僕は、まだ校庭に落ちてばらばらになった漫画のページを拾うためにかがんだ。
情けなくて、涙がこぼれた。
僕が手を伸ばした漫画のページにもう一つ伸ばした手が滲んだ世界に見えた。
顔を上げると滲んでよくわからなかったが、そいつは微笑んでいるように見えた。
「この漫画のいいところってさ、主人公がひとりじゃ生きていけないってところだよな。力もなきゃ頭がいいわけでもない。見た目だってカッコイイわけじゃないし。でも、いつも真っ直ぐで自分よりも強い悪人に勇気を持って立ち向かう王子。そんな王子だからいい仲間に恵まれてさ。仲間たちに助けてもらってやっと物語が進んでいく。俺この漫画のそういうところが好きなんだ」
僕はそいつが急にそんな話しをするものだから、意味がわからなくてさっきまでの涙も引っ込んでいた。
「だから俺もそうやって生きて行きたいって思ってたんだ。正しい道を進んでいたらきっと誰かが支えてくれて、逆に俺が誰かを支えたり。でも現実はそううまくいかなくて」
そいつは、ぎゅっと唇を噛み締めた。
「ごめん。本当にごめん」
涙はとっくに引っ込んでいたから、そいつの顔はもうはっきりと見えた。
だから僕は本当にそいつが心から謝っていることがわかった。
僕はふと手を伸ばした漫画のページを見つめた。




