ソウマとサカキ
◯センゴク
2階から降りてきたソウマが大事そうに抱えていたのはセロハンテープでいたるところを貼り付けている漫画だった。
「なんだその汚い漫画」
そんな俺の言葉を聞いてソウマの表情が曇ったが、どこか納得している様でもあった。
「やっぱり覚えていないんだね」
全く覚えてはいなかったが、察しはついた。
「それ、俺がやったんだな」
ソウマは無言でそのセロハンテープまみれの漫画を俺に差し出した。
俺はその漫画を受け取った。
漫画の表紙はビリビリに破かれてはいたが、タイトルはちゃんと読めた。
大きな赤い文字でイッコクノオウ3巻と書かれている。
「サカキ・・・君はその漫画が大好きだったんだ。この漫画を僕たちが教室で読んでいるとき、センゴク君、君たちが近づいてきて」
「破ったのか?」
ソウマは頷いた。
「教室の隅でコソコソしている僕たちが気に食わないって理由でね。そして破ったこの漫画を窓から放り投げたんだよ」
俺は思わず、え?と声を出していた。
高校生時代の俺は本当にガキだ。
今でも兄貴たちからガキぽいところを直せと言われているんだから当たり前なのだが。
「あの頃はとにかくむしゃくしゃしていたんだ。お前らをいじめていたってうよりもイライラをぶつけてたんだ。だからその・・・」
俺は膝に手をついて頭を下げた。
「悪かったな」
「いや、そんな・・・謝って欲しかったわけじゃ。とにかくこのことがきっかけでサカキ氏・・・じゃなくてサカキ君と仲良くなったんだ」
俺はそこで昔サカキが言っていた言葉を思い出した。
“だって俺アニメも漫画も昔から大好きだったし。あいつらと結構気が合ったんだ。だから内心、俺らひどいことするなあって思ってたんだぜ?でも、お前らはそんなことちっぽけも思ってなかったみたいだから。こっそり取り上げた雑誌や漫画を返してその時に仲良くなったんだよ”
「僕はね、センゴク君。サカキ・・・君と友達になれたことは、僕にとって、僕の人生にとって一番価値があったことだと思っているんだよ」
ソウマのその言葉に俺は顔を上げた。
「お前らは本当に仲が良かったんだな」
ソウマは力なく笑っていた。




