センゴクの頼みごと
○センゴク
俺は少しだけ、こいつが、ソウマが羨ましかった。
こいつの様に感情的に泣けたら。
俺の方がサカキとの長い付き合いであることは絶対だ。
なのに俺は泣けない。
サカキの死は本当に悲しい。
でも、涙がこぼれないんだ。
それはきっと俺たちがこの世界に入るために引換えにした感情なのかもしれない。
俺は口から大きく煙を吐き出した。
いや、今はそのことじゃねえ。
俺はソウマを見つめた。
「ソウマ、お前に頼みがある」
ソウマは鼻をすすりながら俺を見つめた。
「頼み?」
俺はずっと手に持っていた茶封筒をソウマに差し出した。
「これを読んでほしい」
ソウマはきょとんとした顔をしていた。
その顔を見て俺はサカキが言っていたことが本当だったとわかった。
サカキは漫画を書いていたことを俺以外の人間には誰にも言っていなかったのだ。
このオタク友達であるソウマにすら。
ソウマは茶封筒の中身を取り出すと、目を大きく見開いた。
「これは・・・漫画!?」
俺は頷いた。
「サカキが描いた漫画だ」
「サカキ氏、じゃなくてサカキ君が?」
「サカキからずっと前に漫画を書いていることを聞いてよ、それからすぐ俺が刺されて入院した時に・・・おい、引くなよ。刺されたと言ってもそんな大した傷じゃなかったんだが、その時に今書いている漫画の隠し場所を教えてもらったんだ」
あの時、あの病室でのことを俺はソウマに話し始めた。




