蝶カッコいいパリス様VSダイオウツノガエル
パリスから誘ったデートでアイが負傷した。
勿論回復が使えるアイにとって別にそれは大したことじゃなかったのだが、
アイの印象を悪くしたくないということと、
何かしらの形で関係を継続したいと考えていたパリスは暫くアイのエサ取り係を強引に立候補したのだ。
パリスの必死さに押されたアイは、
「まっまぁそういうなら…。」
とうなずくしかなかった。
個虫的には今迄に無い補完性を持つコンビネーションを出せるパリスと共闘することは愉しかったのだが。
以前は透明になって姿を消したまま移動することがデフォルトでできたパリス。
獲物にはパリスに気付くことなく狩られていったものも多い。
しかし今は隠密性とは程遠い。
眩しい、熱い。イケメン。
3つも目立つ要素があって目立たない要素などどこにもない。
寧ろ目立つしかない。
パリス的には頑張って忍んでみたようだが、今回の獲物であるシカのモンスター、
シロマシカにはバレていた。
臆病なその性質から昆虫族モンスター成虫体であるパリスに対し警戒していつでも逃げられるように体勢をとっている。かなりの距離が離れているにも拘らず、だ。
普段回避に使っている先読みと直感を攻撃に回せばいい話ではあるが、
それほど速度が無ければ離れた場所にいて逃げる相手には届かない。
そもそも届かなければどれだけ敵の回避や防御を抜いたとしても何の意味もないのだ。
だからパリスは体温を上昇させた。
周囲の大気が熱されて膨張していく。
大気が歪み光の経路の歪みから蜃気楼が生まれる。
突如シロマシカの視界からパリスが消えたように見えた。
というかパリスの周りの風景が歪んで他の所が見えた。
焦るシロマシカ。
取り敢えずキョロキョロと周囲を見回す。
これが悪手であった。もしすぐに蝶がいなかった方へ逃げたなら話は変わっていた。
キョロキョロし続けた結果ちょっと離れた場所に蝶の姿を発見した。
ただ、少し離れたといっても蝶にとっては炎を放てば届く距離になっていたのだ。
シロマシカが最後に見た光景は目の前に広がる炎……ではなくピンク色の肉壁であった。
パリスが放った炎がシロマシカに当たる少し前、
シロマシカの横から長い舌が伸びてシロマシカに巻き付き、そしてその身体を引っ張っていった。
ダイオウツノガエル RANK C+
その舌の持ち主だ。
標準的な大きめのシカのサイズとそう変わらないシロマシカを丸呑みするほどの巨大なカエルのモンスターだった。
下手をしたら、というかしなくてもシロマシカ2匹同時を食べてもまだ余裕がありそうな大きさだった。
つまり、シロマシカを食べてなお、パリスを食べる食欲があってもおかしくないということだった。
案の定ダイオウツノガエルはその長い舌を伸ばしてきた。
やたらねっとりしているので当たった時にダメージになる可能性もあるが、
それ以前に生理的に当たりたくなかった。
ダイオウツノガエルの舌を躱して炎を撃ち抜く。
口の中に炎が入っていったダイオウツノガエルは苦しんで転げまわる。
「さて、蝦蟇の油とかいうの聞いたことあるけどさ、実際蛙って燃えやすいの?
……まっ燃えにくくても無理やり燃やすんだけどさ。」
パリスは転げまわる巨大ガエルに大体正確に炎をぶつけていった。
転げまわりながらも命の危機によってどこかの部分が冷静になったダイオウツノガエル。
ダイオウツノガエルは身軽になって逃げるためにシロマシカをパリスに向かって吐き出し、
自身は逃げ出した。
「まぁそれで逃げられると思ってた?甘ぇよ。」
パリスは再び炎を放つ準備をする。
しかしダイオウツノガエルにも勝算はあったのだ。
草むらを越えて近くにある池に飛び込めば何とかなる。
そう思っていたのだ。
実際助かっただろう。無事逃げ切れれば。
ただ、残念なことに目の前の草むらが燃えていたのだ。
目の前だけではない。右も左も燃えていた。燃えていないのは――――――後ろだけ。
誰の仕業かは言うまでもない。
カエルモンスターの中では上位に位置するダイオウツノガエルはここにきて大王らしい意地を見せた。
背後の蝶に向き直り再び舌を伸ばしたのだ。
でも、意地を見せるということ結果が伴うということはイコールではつながらない。
「ワンパターンだなお前。まっ、オレもさっきから炎飛ばしたりしかしてねえけどな。」
パリスは再び炎をダイオウツノガエルの口にはなった。
偉い人は先頭に立って見本を示すとはよく言ったものだ。
夏に干乾びる蛙達に先んじてダイオウツノガエルは春の森で干乾びた。
「一度カエルが口に入れた獲物を渡すのもなぁ……まぁいいや今回はご縁が無かったっつーことで。」
パリスは迷った挙句ダイオウツノガエルに横取りされたシロマシカを焼き尽くした。
シロマシカ
回復術に優れたシカのモンスター。
足元の植物の生命力を増大させて成長させ、自らのエサとするモンスターだ。
その身体から上等な回復薬が作られるために一時期人間に狙われ過ぎてその個体数を減らしたことがあった。
しかしその為にシロマシカ由来の回復薬を入手しづらくなったため、狩る頻度が抑えられた。
また、人工的に飼育する試みも始められているが今だ成功とは言い難い。
家畜化した個体は生命力増大作用が天然のものより劣るも、再び野生化した際には回復していることが知られている。
進化系にマシロマシカがおり、そちらは人間の手には余る。
脱走した個体が仲間を救出しに来た際にマシロマシカに進化しており、農場は壊滅した記録が残っている。




