蝶カッコいいパリス様VSフェニックス(2戦目)
鳥族と昆虫族には浅からぬ因縁がある。
それもそのはずだ。
鳥族に与えられた役目とは効率的に昆虫族を排すること。
おおよその鳥族には先天的に対虫の能力が備わっている。
その事を詳しく話していくとまた別の話になってしまうので3行でまとめると、
昆虫族は実はインベーダー。
侵略されたされた星がピンチ。
鳥、超頑張れ。
こんな感じだ。
まぁ野生の世界にはどっちが悪いということは無い。
強いて言えば負けたほうが悪いのだ。
まぁそんな理由があるとはいえ、近しいものを殺されて平然としているわけではない。
実際『暴食』の魔王なんかは親子2代揃っての鳥族への復讐者だ。
何でこんな話をしたかというと今回のパリスの敵も鳥族だからだ。
しかも鳥族の中でも超常の存在『業火纏う不死鳥』、だ。
フェニックスは様々な地域を旅している。それは主食でもある昆虫系モンスターの壊滅のためだ。
昆虫系モンスターの中でも強力なものをその時の状態を見て勝てる相手を選び攻撃する。
基本的にフェニックスは死んでも再生するためか生存時の身体回復能力が低い。
幾ら傷がついても死ねば元通りだからなのだろう。
更にいえば寿命のサイクルが短い。これも上記の理由からだろう。
しかし無限に死に無限に生き続けられるその特性から雛鳥時や老鳥時にでも戦闘を拒むことは少ない。
ちなみに老鳥になるとてっとり早く自害することも多い。
某美しき魔闘家さんのような生き方だ。但しその目的は美しさでは無く強さだが。
そんな死からかけ離れた性質のせいか危機管理能力が著しく少なく痛覚も存在しない。
だから気が付けば戦闘に支障が出るほどのダメージを負っていた場合、
其れでも倒せる敵を狙うか、やっぱり自害する。
永き命の象徴とされる不死鳥はどこの誰よりも命を軽んじる存在なのだ。
先程から述べているように寿命のサイクルが短いこととダメージが致命的になるまで気づかない性質のせいで、
フェニックスは同じ個体でありながら時によってその戦闘力は大きく変わるのだ。
ちなみにリサリアを倒した時のフェニックスはかなり調子が悪い時であり、
その後火山で自害していた。
その後再誕しその直後死亡し、また再誕しそれなりに成長した頃、星からとある昆虫の壊滅指定が降りた。
その存在こそが光を自在に操りあまつさえ地表を蒸発させる出力を発現する最上位蝶族、『幻惑と閃光の魔蝶』パリスである。
その戦闘力が現在のフェニックスならば相打ちで倒せると踏んだのかフェニックスは壊滅指定対象の所へ向かった。
だが姿が透明であるパリスを探すことはできなかった。
だからフェニックスは森ごと焼くことにしたのだ。
幻惑の森 北東部
森の一角に火が発生し、その火はどんどん大きくなってきている。
このままではコミュニティーごと燃えてしまうと判断したパリスは火事の現場に向かった。
そして手遅れになるほど燃え広がる前に燃えている周囲の草木を蒸発させた。
ちょっとした熱線では蒸発の前に照射された草木が燃焼すると判断したため、
その出力は非常に強力なものであり、冷却機能のない科学レーザー生成機構は使用中2度も崩壊した。
しかしその甲斐あってか、燃え広がるものが無くなったために家事の被害はそこで収まった。
だがそんな派手なことをすれば火事の下手人にその存在が、その位置が知られてしまう。
実際火事の下手人にそのおおよその位置を知られてしまい、
そして今、火事の下手人たる不死鳥はパリスの前に舞い降りてきたのである。
パリスはその姿を確認するや否や攻撃に転じた。
この不死鳥かどうかは世界に不死鳥が1匹しかいないという事実を知らないパリスには理解できなかったが、
少なくとも不死鳥が、人妻とはいえ美女を、パリスが珍しくというか唯一尊敬する雄蝶である義兄の妻を殺し、
今なおパリスのコミュニティーに損害を与えようとしているからだ。
だがその攻撃の一切が業火纏う不死鳥には通用しなかった。
不死鳥は炎に包まれた体を持っている。
というか炎が本体だといっても問題無いぐらい体積のほとんどが炎である。以外と体はスマートなのだ。
そんな不死鳥に対し、勿論直接攻撃は使用できない。
だからパリスが最初に試したのはケミカルイケメンレーザー、…もとい高出力光学攻撃であった。
だが、レーザーというものも結局熱を発生させる攻撃なのだ。
普段から炎に包まれて大丈夫な不死鳥には効果が無い。
当然ながら『可燃付加』を使った鱗粉や糸なども当然効かないので使いもしなかった。
次に鱗粉に毒や体力を奪う効果を付与してばら撒いても不死鳥の纏う炎に焼き尽くされて届いていない。
まぁ鱗粉は多分無理だろうとパリスもわかっていたことだった。
しかし、正直本命の攻撃手段であった『感覚操作』による直接苦痛を叩きこむ方法が全く効いていなかったことにはパリスは驚愕を隠しきれなかった。
そんな中パリスに向かって不死鳥も反撃を仕掛けてきた。
パリスの攻撃は通用しなくてもパリスの幻影による姿を隠し攪乱させる方法は効いているようで、
なりふり構わず射出される炎はパリスの方に飛んでくることはあまりない。
しかし中にはパリスの方に向かって飛んでくる炎弾もあり、その熱波だけでパリスにはそれなりのダメージが入っていた。
パリスが防戦一方でじり貧となっているが、パリスは一匹ではない。助けてくれる妻たちが存在するのだ。
1匹で火事の現場に駆け付けたパリスの様子を見に来たのかアイリーンとユーミアがやってきた。
「苦戦しているみたいね。」
「状況は…よくないね。」
3対1でパリスの側が有利になったと誰もが思ったが結果はそうならなかった。
幻惑蝶の進化前である透明翅蝶のユーミアの攻撃能力はパリスの下位互換であるし、
アイリーンに至っては火にアルコールを注ぐ状況であった。
この場にイレーネがいれば唯一攻撃が通用する存在であっただろうが、
イレーネがコミュニティーを抜けた今、攻撃手段を持つものはいなかった。
寧ろ姿を隠せないアイリーンが来たことでアイリーンを隠すための光学鱗粉の操作が必要となり、
パリスの状況は悪化していた。
実はイレーネもこの場にいたのだ。
しかし父親を殺されたという感情と、自らの負の象徴であるアイリーンがその場にいることで出てくることはできなかった。
そんなイレーネの存在に気が付いていたのはアイリーンだけだったがアイリーンはパリスにもユーミアにもそれを告げることは無かった。
不死鳥は攻撃が当たりにくいことから攻撃のパターンを変えた。
強く狭くではない、攻撃の範囲を優先したのだ。攻撃の余波だけで時折見える相手の苦悶の表情が認識できる。
ならば攻撃が当たりさえすれば着実に勝利に近づいていくはずだと、そう考えたのだ。
その思考は成功し、パリスたちに向かって降り注ぐ細かい火花が産む熱が着実にパリスたちを消耗させている。
パリスは守るべきものを護れぬ無力さに焦り、
ユーミアは勝てる可能性を演算するも見つけられず、それでも演算を続け、
アイリーンは唯一この場で反撃できる手段を知りながらも言わぬ自分に軽蔑と葛藤を続け、
イレーネは動くこともできずにただ悩み続けていた。
やがてユーミアは一つの攻撃方法を思いついた。
「勝つ手段は…ある。…でも……。」
しかしそれは実行者が相手の反撃を受け相打ちになる可能性が極めて高い方法だった。
「でも、何なんだよ。」
パリスにとっては勝てるのならその方法を知りたかった。
そんなパリスから視線を逸らしながらもユーミアは告げる。
この作戦を言ってしまえば、パリスが実行に移すことは想像がついた。
しかし、それならば最初に手段が残っていると言った時点で失敗だったのだ。
かたくなに自分基準のカッコよさにこだわるパリスが仲間を背に敗北などというカッコ悪い選択肢を選ぶことは無いからだ。
結局、ユーミアはパリス自身よりもパリスの生き方を優先したと嘯きながら概要を離すことにした。
「…でも、実行したものは…、多分死ぬ。」
「「っっ!?」」
パリスとアイリーン衝撃が走る。
アイリーンはこの場のうちだれがそれを実行するかと考えていた。
そしてパリスはユーミアの予想通り、内心驚きながらも『カッコいい』方を選んだのだ。
「聞かせてくれよ、その作戦ってのを。」
「…わかった。概要は、燃える空気を失くせばいい。それだけ。」
ユーミアはその返答を理解していたのか驚くこともなくそのまま言葉を紡ぐ。
「……っそういうことか。だが仮にそれが成功しても再点火までに時間が無い。
だから死ぬってことなのか。」
「……そういうこと。」
「ちょっと待ってくれない?全然わからないんですけど。
……取り敢えずあなたがその特攻に志願したってことなの?」
「いや、だって女の子にこんなことさせられないだろっ?」
「っっ……。」
自分は先程までその1匹になりたくないと考えていたがパリスはそもそもそんな選択肢など考えてもいなかったのだ。
「本当に……行くの?」
先程までパリスがその選択肢を選ぶことは完全に想定済みであったにもかかわらず、
いざパリスが行くことになると思うと引き返してほしいという思いをユーミアは抑えきれなくなった。
やっぱり意見を翻してほしいと思う自分がそこにいたのだ。
だが、彼は彼なりのカッコ良さにどこまでもこだわるのだろう。
「あぁ、………じゃ、2匹とも、『いってくる』。」
死出の片道切符を握りしめパリスは不死鳥に飛翔した。
不死鳥の近くまで姿を隠し飛行するパリス。近づけば近づくほどその纏う炎の熱波に時折透明化が歪みそうになる。
実際に1度バレかけて炎弾を直撃しかけた。
それでも距離を詰め歪んでいく翅を抑えながらパリスは唯一の攻撃手段とやらを取ることにした。
その手段は先程までパリスがとろうとも思っていなかった手段であった。
それを思いつくあたりやっぱりユーミアは凄いとかのんきなことを考えながらパリスは行動した。
パリスはダイアの鱗粉を周囲にばら撒き続ける。ご丁寧に『燃焼付加』まで付けて、だ。
不死鳥の周囲の炎がそれを受けて一斉に燃え上がる。
パリスは熱気を受けながらも更に鱗粉を大量に生成し続けた。
最後の手段だからだろう。もはや姿を隠すことすらしていない。そのリソースさえも鱗粉の生成に使っているのだ。
不死鳥の炎は更に大きく燃え上がったがそれは一瞬だけだった。
炎を受け周囲の酸素と一斉に結びついたダイアの炭素が酸素を二酸化炭素へと変換し、燃える事をできなくしたのだ。
しかしそれも周囲の空気が動くか不死鳥がその場から移動すれば終わってしまう話だった。
だからこそパリスは一気にたたみかける。
その翅をもって不死鳥を斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、
斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って
斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って
斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って
斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って
斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って、斬って
斬り続けた。不死鳥が炎を上げられないながらもその体表の温度を高く上げてなおパリスはその翅を振り続けた。
パリスが不死鳥の身体を切断する少しだけ前の瞬間に不死鳥は周囲に酸素を取り戻し、
最後の力を振り絞って周囲の森を火の海に変える業火の渦を作り出した。
燃え上がる業火の中、自分の身体が灰になっていくのを感じながらパリスはその翅を振り下ろした。
ユーミアとアイリーン、そしてイレーネは見た。愛しい雄蝶が業火の中炭となって地に墜ちていくのを。
せめてその炭でさえは拾ってやりたいとは思ったがその場所は今もなお業火が渦巻いている。
その劫火がそれ以上周囲の森に広がらないのはパリスが残した置き土産ということなのだろう。
暫くは消えなかった業火と、
その業火から先程パリスが倒したはずの不死鳥が若返って飛び立っていたのを3匹はずっと見ていた。
その後、
ユーミアはその後パリスの後を継いでコミュニティーのリーダーとなり、
アイリーンはイレーネが参戦していればと憤りもしていたがそれを2匹に告げなかった自分が何を今更ということと、
また誰かに責任を押し付けて自分が助かろうとするのかと自己嫌悪し、コミュニティーから去り、
イレーネもまた姿を隠した。




