蝶カッコいいパリス様VS狂信者
仮面をつける者よ常に心せよ
付けた仮面にとってかわられぬように、
汝の素顔を忘れぬように。
仮面をつけた者よ常に心せよ
汝の意思は汝自身の者であるのかを。
パリスがいつも通り周囲のものをスルーしたり、殺したり、
嬲ったり、スルーしたり、スルーするふりしてやっぱり殺していた時のことだった。
男が走っていた。男の服はこの時代にしては大層手が込んでいて厳粛さと華やかさを兼ね備えた金をあしらった白衣。
まぁ平たく言うと神官服でとどのつまり男は神官だった。
男は突然立ち止まった。当然だ獲物を融かして喰らっていた巨大な蛆虫、
アシッドマゴット5体が神官に気付き襲い掛かってきたからだ。
男は立ち止まり、懐から何かを取出し、そして嗤いだした。
「神よ、おお神よ。なんと重たい試練を授けられるのだ。
しかしあなたが授けられた試練であれば甘んじて受けましょう。」
男が取り出したもの、―――――それは仮面だった。
「力を」
右手に持った神秘文字で星への賛美が刻まれた仮面を顔に当てる。
<「変身ッ!!」>
神官、いや破邪の仮面の仮面装着者はアシッドマゴットに純然たる殺気を向ける。
そこにあるのは恐怖を覆い隠すための怒りではなく星を汚す害虫どもに対する義務感にも似た怒り。
元々信仰心が高い男であったが、変身後の彼のそれは信仰心という程度の生易しいものではない。
神に支配されたプログラムだ。神に仇名すものを屠るようプログラムされた人形こそが今の彼である。
メタルサルの身体を融かしつくしその溶けた体液を浴びるように吸っていたアシッドマゴットは新たな獲物に襲い掛かる。
5匹の内4匹が一斉に襲い掛かった。
「ハッ!!」
4匹アシッドマゴットが襲い掛かった所にはいつの間にか仮面の戦士はおらず、
いつの間にか4匹の背後に仮面の戦士は移動していた。
そしてアシッドマゴットは攻撃に失敗し地面にぶつかったと同時に体中から体液を吹き出して爆散した。
その原因を造ったのは当然破邪の仮面の戦士だ。
超高速移動、英雄補正(幸運付加)のたまものである。
『破邪の仮面』
星に仇名す害虫どもを駆逐するために神より与えられたその仮面の最大の効果は、
装着者を強制的に『勇者』にするというものである。
突然の仲間の死に本能的に危険を感じたのかすぐに逃げようとする残り一匹のアシッドマゴット。
しかし破邪の仮面はそれを逃がすことはしなかった。
「神の御意思だ。」
残った一匹のアシッドマゴットも他の4匹と同様に爆散した。
そんな神官の前にパリスは透明化を解除し、姿を現す。
そもそも、仮面をつけたころからパリスの存在に気付いていたようであったが。
<これはこれは、探そうと思っていた魔王が自分から出てきてくれるとは。>
<オレ様に何の用があるわけ?>
<当然、『害虫駆除』ですよ。>
<…OK。自殺希望ってわけか。どうやって死にたい?サービスで選ばせてやるよ。>
<相打ちがいいですね。全ての害虫を道ずれに。……きっと死後は神の御許に行けるでしょうから。>
<気持ちわりぃなてめえ。>
<では死になさい。虫とこれ以上なれ合うことなど神の僕としてあるべき姿ではないですから。>
<何?てめぇカミサマがいうから生きてんの?だったらカミサマに死ねって言われたら死ぬの?>
パリスはそう挑発しながらもきっちり裏工作をしていた。
毒の鱗粉やフェロモン、そして幻覚だ。
しかし仮面がその全てをマスクになって防いでいるようだ。
不要な光や粒子を防ぐマスク、まぁ仮面だからマスクなのは当たり前だろうが。
<何を当然のことを。後、何かしましたか?まぁいいです。――――――――――では神の裁きに消えなさい。>
先程と同様に仮面の戦士は超高速でパリスに迫ってきた。
先程のウジ虫どもは為す術もなくやられたが、パリスにはその動きはつかめていた。
蛆虫を切り裂く瞬間だけ現れた半透明の光る剣だ。
パリスに対しても再びその剣で斬りかかろうというのだろう。
凡百のモンスターなら切裂かれたかもしれない。
しかしパリスはヒト種には魔王とまで恐れられる程のSS+級超上位昆虫族モンスターだ。
その剣を翅で受け止める。
<やるじゃん。ヒトの分際で。>
<黙りなさい虫けら。>
<てめぇ解かってねーみたいだな。てめぇはいまおれに生かされてんの。理解してないでしょ。>
<何?>
<じゃあちょっと本気見せようか?ほら盛り上げろよ。パリス様のちょっといいとこ見てみたい~って。>
<面妖な。>
<言ってろ。オレ様に従わない奴がどうなるのか身体に教え込んでやるよ。>
仮面の戦士は剣を振るうがそれ以降一向に当たらなくなった。
逆にパリスの翅は次々と仮面の戦士の身体に傷をつけていく。
そしてその中に致命傷が無いのはどう見てもわざとであった。
<どう?ギブアップするか?…まっ、させ―ねーけどな。>
<くっ、神の御威光が届かないのか?神よ。>
<…………てめぇさ、何のために戦ってんの?>
<神の御意思だ。神の示す正義の為だ。>
<そんな安いものはどうだっていい。肝心なのはお前の意思だ。
与えられた正義でこのオレ様に勝とうなんて千年経ってもまだ早えーよっ。>
パリスは仮面の戦士の身体を横一線に両断した。
身体が真っ二つになった仮面の戦士は神官の姿に戻った。
…身体は真っ二つのままだが。
パリスは男が素顔に戻っているので仮面を探してみたがいつの間にかなくなっていた。
「まっ、いいけどな。イケメンのオレは仮面で顔を隠す必要なんてないのさ。」
其れから数時間後、少し離れた場森の入り口付近にて、子供が地面に落ちた何かを見つけた。
「あれ、なんだろう?」
拾い上げてみるとそれは仮面だった。
子供はそれを試しに顔に付けてみた。好奇心というよりそうしなければと思ったからだった。
「僕にはあくを倒す力がある。だから――――――――殺さなきゃ。」




