蝶カッコいいパリス様VSダークリングトニア
チョロい担当、もといイレーネをパリスガールズコレクション通称パリコレに加えたパリスは、
一応妻帯者なので流石に連れて帰るのはアレかなと思い、今回は途中で別れようとしたが、
何故かイレーネは強引についてきた。
ユーミアが基本無口なのに対し、イレーネは結構おしゃべりだ。
パリスから聞くまでもなくいろんなことを自分から話してくれた。
曰くイレーネの血統は名家中の名家だとか、
イレーネの生存年月で色素区分第二段階にまで進化しているのは蝶族全体でも珍しいとか、
名家であるがゆえに暗黒蝶若しくは黒色蝶系統の内定保持者でなく産まれれば放逐されるところだったとか、
それで妹は放逐処分にされたとか、
自慢話から出会ってそう間もない相手に聞かせるには重たすぎるお家事情まで色んな話をパリスは効く羽目になった。
黒色蝶の第二段階たる暗黒蝶は闇を操る上位の昆虫系モンスターだ。
その戦い方は光と闇という不幸性こそ真逆だがグラスウィングバタフライ系統同様に光学的に相手を惑わせるというものが一つ、
もう一つは闇食みと言われる闇により造られた第二の口で相手を捕食するというものだ。
その他にも幾つか攻撃パターンはあるが咄嗟にあげるとこんなところである。
ならば先程の蜘蛛の巣に引っかかった時なぜ闇食みで周りの巣を喰らい逃げることができなかったのか、
それはイレーネが成虫したてだったからである。
内定のおかげでいきなり暗黒蝶の成虫に羽化したイレーネにとって森林性火蜘蛛は初めての強敵だった。
パリスが幾つかの特性を進化してしばらくしてから手に入れたように、蝶族には成虫してすぐ特性がすべて完成するわけでないものが存在する。
ぶっちゃけイレーネもその口であったわけだ。
どんだけ本来のスペックが高かろうと大体自惚れて調子に乗っているものは足元をすくわれる。
そうならないのは圧倒的なスペックを持ちあらゆる有象無象とは隔絶した存在位だ。
有名どころでは蜂族の女王級がそのような存在であろう。
……話はそれたが要するにイレーネはその性格を改善するか、性能を上昇させるかしなければ、またピンチになるということだ。
「えっ?ちょっ、ちょっと何ですかコレ!?助けて。」
――――――――――――そう、こんな風に。
ダークリングトニア RANK C+ 植物系モンスター。
イレーネは蛇のようにくらいついてきた植物の捕虫器に丸呑みにされていた。
ダークリングトニアはウツボカズラのような捕虫器を幾つも横に倒したような形で周囲に配置したようなモンスターだ。
横たわった黒縞模様の捕虫器は蛇のように地を這い、獲物に喰らいつく。
その獲物はどちらかというと、虫よりネズミなどのような陸上製小型哺乳類が多いが、時折大型の獲物も狙うことがある。
中央には意外ときれいだがそれでも禍々しさを拭えないような花が束になって咲いており、それが本体であり、
その最大の特徴は、名前の通り『闇』を捕食に使う点である。
入るは易し出るは難しな形の上、積極的に地を這い飛び掛かる腕のような幾つもの捕虫器を持つダークリングトニアだが、
その捕虫器に入っているのは消化液では無く『闇』。
ダークバタフライ同様に『闇食み』を使用するモンスターだ。
『闇食み』の最も恐ろしい点は反撃気力を強制的に鎮静化させ心身ともに溶かす様に捕食するという点だ。
本来ダークリングトニアは一匹前に成長したダークバタフライの好んで食う植物の一つだ。
しかしイレーネはまだひよっこもいいところだ。
イレーネは自身の闇属性によって闇食みの影響はほぼ受けていないといっても問題ないが、
効果が無いと見るや今度はダークリングトニアは捕虫器を絞り込むようにしイレーネを締め付け押しつぶそうとしてきた。
「きっつ、凄くきついですわ。体が折れそうですわ。早く助けて下さい。」
言われなくてもイレーネを助けようとしたパリスだが、
パリスに向かってイレーネを捕獲したもの以外の捕虫器が一斉にその口を開き口から闇を放出した。
ダークリングトニアとパリスの間に現れた闇に一枚の葉っぱが風で流されてきたが、
その葉っぱが風に流されるまま、闇から再び出ることは無かった。
それが無くとも、パリスには直感的に、あの闇は危険なものだと理解していた。
実際、闇全体がダークリングトニアの胃袋のようなものでもあるのでその直感は間違ってはいなかった。
しかし、
「闇は光でかき消せばいいだけの事さ。光魔法カッコいいポ○ズ!!
―――――――あっ一応言っておくけどカッコいいのはポーズよりも俺自身な。」
ちょっと勇者チックなポーズをとるパリスだが、実際に引き起こしたのは、
光魔法ではなく翅による光の収束である。
イレーネの声や風の流れ、闇に覆われる寸前の視覚からイレーネの捕まった捕虫器を確認したパリスはその周囲を円を描くように光線で焼き切った。
捕虫器の膨らみの下の茎が切断されたことで蛇のような捕虫器はその口を大きく開いて獲物を逃がしてしまう。
「けほっけほっけほ、
あ~ありがとうございました。流石は私の婚約者ですわね。助かりましたわ。」
えっ?何時の間に彼氏から婚約者に格上げ?
……どんだけチョロいんだこの娘は………。
イレーネの一見攻略難易度が高そうなのにその実超イージーどころかプラクティスモードレベルなチョロさにパリスは思わず戦闘を忘れてしまいそうになる。
―――――――それがいけなかった。
気付けば周囲は闇に呑まれている。某アイドルがやっているようにあいさつ程度のレベルではない。
明らかに危険な濃度と範囲で闇が空間に充満していた。
ダークリングトニアは一株ではなかったのだ。イレーネを捕食した目の前のダークリングトニアに気を取られていたパリスは気付けなかったが、
少し離れた場所にいる他の何株かのダークリングトニアが蛇のように地を這う捕虫器だけを伸ばしパリスの捕食に参加していた。
RANK Aのモンスターなどそうそう喰らえるものではない。涎のように漏れ出しそうな闇を抑えながら幾つもの捕虫器がパリスの周囲を囲み、
一斉に闇を放出した。
しかし蝕むような闇がパリスの身を侵したのはほんの一瞬ですぐにその闇はどこか心地よい微睡を誘う闇に変わっていた。
この場に存在するのはパリスとダークリングトニアともう一匹だけ。
もう一匹、イレーネがダークリングトニアの闇を自身の闇で呑み込んだのだ。
「害意のある闇をありがとうございます。お蔭で私もその感覚が掴めましたの。
ですが…、――――――私の闇はあなたのほど『明るく』はありませんわ。」
一瞬、一瞬の出来事であった。
光学技術の申し子たるクリアバタフライのパリスの視界を完全にうまうほどの闇が辺りを包み、
弾け、元の明るい世界が戻ってきた。
―――――但し、周囲の空間は削り取られたように溶け爛れていた。
「ふふふん、どうですか?私の雄姿ご覧になられましたか?
ついでに改めて私に惚れ直しましたか?……それとも強い雌はお嫌いですか?」
「いっいや別に。凄くカッコ良かったんじゃないかな?………何も見えなかったけどな。」
「………ですわね…。」
やや離れた場所にて、
「しくじったようね。所詮Bランクにも満たないザコでは意味が無かったようね。――――――――――憎きクラミツハ、絶対に赦さない。」
ちなみにパリスは照明は付けたままの方が興奮する派です。(何の話だ。)




