蝶カッコいいパリス様VS乙女の守護女神の御使い信仰
変わりゆくこと
もうモンスターになって随分長くなったパリスは人からはだいぶ離れてきた。
しかし彼は元は人だ。
そんな彼に人であったことを思い出させる事件があった。
パリスが群れからだいぶ離れた森の端付近まで言っていた時だ。
「はぁっ、はぁっ」
痩せた長髪の耳が長い人型の女性が森を走り抜けている。
服はボロボロで靴も履いていない。
何よりその手を縛る、何やら紋様が書かれた革製の手錠と首輪が彼女が奴隷だということを示している。
彼女は腕が振れないという不安定な姿勢で何度も転倒しながらも森の中へ入っていく足を止めない。
「待ちやがれこのアマ、捕まえたらただじゃおかねえぞ。」
そんな怒鳴り声をあげながら後ろから何名かの男が森の中に入ってきていた。
そんなことを聞いて待つ奴がいる筈など無いのだがそれでも男たちは乱暴な言葉遣いをやめない。
魔の住まう森、そんなところに一分一秒でも足をとどめておきたくないのが男たちの心情だが、
それでも女を捕まえてやらなければ気が済まない。
だからこそ最初こそビクビクしていたものの、
男の仲間たちが十分に集まると速く探し出して森から去ろうということになった。
栄養失調の痩せこけ、転倒し何度も体を痛めた少女と屈強そうな男たち。
追いかけっこの終焉は直ぐにやってきた。
何度目かの転倒に痛めた体で必死に起き上がろうとした少女の後ろから追跡者たちの下卑た声がした。
「もうにがさねーぞっ。」
「まったく手こずらせやがってよ。痛い目見ねえ判んねえみたいだなぁ。」
「蹴られたタマがいてえよお。てめえにはたっぷり慰めてもらうからな。」
「おいおい、それ俺たちも混ぜろよ。」
「アニキ、おれっちもおこぼれいいですかね、グヒヒヒヒ。」
「いっいやぁぁっ。」
「何が嫌なもんか手前に拒否権はねえんだよこの亜人共が。」
人ではあるがヒトではない亜人の少女。人によってはエルフと呼ぶものもいるかもしれない。
この時代ヒト族は己以外の人型全てを亜人とし、本来人型全ての総称であるヒトを自らの種族とし亜人とした他種族を迫害していた。
彼女もヒト族に村を焼き払われ奪い殺し犯し貶められて奴隷となってヒト族の集落に奴隷商品として連れてこられた。
接続術が使えない様に処置されて、だ。
あるとき彼女が入れられた檻の鍵を持った看守の一人が
彼女に下卑た欲望をぶつけるべく檻の中に入ろうと鍵を開けた瞬間を見計らって
彼女は看守の急所を蹴り上げて悶絶している隙に脱走したのだ。
しかし結局今その逃走も終わりを告げようとしていた。
少女の顔には恐怖と絶望と諦めとほんの少しの生への渇望が浮かんでいた。
思わず後ずさるがそれは背後にあったこのあたりでも比較的大きな木にぶつかって止められる。
(神様。)
少女は目を閉じ祈る。滅んだ彼女の部落に伝わる乙女を守護するとされる少女たちに人気のあった女神へ。
「う”がはっ」
「ひぃぃぃなんなんだ」
「やばいよこわいよわけわかんないよ、まま~」
「にっ、にげ、にげっはやっ、く」
「あは、あはははは、あはは」
目をつぶった彼女の長い耳に男のうち一人の断末魔と別の男たちの悲鳴だった。
思わず少女が目を見開くとそこには腹に穴を開けた男がいた。男の身体は何故か干乾びている。
「女神…様?」
彼女はそうつぶやいたが彼女を助けたのは女神や女神の使いとは程遠いものだった。
パリスが森の端まで来たとき何かが走ってくるのがわかった。パリスはとりあえず姿を透明にする。
(アレは……人? しかも金髪美少女。………………………あれ?こんなもんだったっけ?
確かに可愛いがユーミア達ほどグッとくるものが無い。…虫になって長いからか?
…………俺も変わったな。)
要因はいくつかあるだろう。金髪の少女は確かに美少女だが、
彼女の種族の中ではなかなかいない程度の美少女だ。
対してユーミアの場合は類まれな、というレベルになる。
その他にも比較対象となる他の人間を最近見ていないなど要因は探せばあるのだが、
やはりパリス自身が言った通り彼自身が虫になったことが最大の要因であろう。
だが、それでも…。
「オレは可愛い女の子の味方だ。」
パリスは姿を消したまま少女を捕えに来た男たちを全員始末した。
最後の一人には光学操作の応用の光線で焼き尽くした。
少女にはそれが女神のもたらした光だと思えた。
何故か一瞬巨大な蝶が見えたような気がしたが少女はそれは女神の御使いだと信じることにした。
逃げ延びた少女の口からか他の誰かの口からか、
いつしかこの森には女神様の御使いがいるといううわさが広がった。
当初はおた話だとされていたが、暴漢などに追われ森に逃げ込んだ女性が助かるということが何件か続き、
女神の御使いの話は信憑性を増し、周囲の女性の間に広まっていった。
ちなみにブスや男は普通に死んだ。助かるのは可愛い女の子限定であったらしい。
変わらないこと




