蝶カッコいいパリス様VS名も無き植物モンスター
姉リサリアの差し金でデートに行くことになった妹のユーミアとパリス。
正直デートだとユーミアがわかっているかどうかは判らないが、
パリス的には女の子と一緒に出掛けるだけで十分デートだった。
この殺伐とした世界の中で女の子と一緒に出掛けるという感覚に、
そしてその女の子が可愛く周りの男の視線を奪えるという優越感に歓喜していた。
かつては女の子をアクセサリーにしている感覚が強かったが、
今では単純に美少女と一緒にいられるだけで楽しい。……たとえ相手が虫でも。
人だった頃よりマシな性格になったのか、単純に女に飢えているのかはわからない。
それでもパリスはほんの少しくらいは他者に好かれる性格になったのではないだろうか。
…もちろん性格より顔だというのがパリスの今だ変わらない持論ではあるが。
よく不細工を批判すると不細工でも成功した例や、
不細工な真面目がイケメンな不真面目に勝った例をあげる奴がいるが、
そんなのはあくまでほんの一部の例外で大半は無残な結果に終わる。
なぜ彼らが例外をあげただけで大きな流れを無視できるという発想に至るかはわからないが、
欠点を個性と誤魔化したところで人より劣っているところは所詮欠点に過ぎない。
それは本人たちが一番わかっているはずだ。
つまりイケメンのオレはイケメンである以上、でも性格が悪ければ…なんて批判に耳を傾ける必要はないのだ。
常にそういう方針で基本強気で生きてきたパリスにはそれなりの自信がある。
多少軽薄でもイケメンなルックスと外に漏れだす自分への強い自信は何かしらの魅力を映すものだ。
事実イケメンな俺こそが秩序で平和で正義だと憚らないパリスに惹かれるメスは今も昔もいる。
しかしそういう女子ばかりだけではない。前世でもそうだった。手に入れたい女程思い通りにならなかった。
そして残念なことにユーミアもそういう類だったのかもしれない。
先程からあちらこちらの花の蜜を吸って回っている。色気より食い気ということだろう。
その中にはモンスターの花もいるがそんなこともお構いなしだ。気にせずに吸いにかかる。
当然中には気が付いて反撃しようとするものもいた。
しかし華麗に舞うユーミアにはその蔦が届くことはない。
同族のパリスにはわかる。光の屈折を巧みに利用して自分の幻影を相手に見せるユーミアの舞いが。
虚実を織り交ぜ時にはそのままの、時には見えている攻撃とはズレた位置からの攻撃が植物モンスターに刺さる。
その舞いに思わずパリスも見入ってしまう。
そうしているあいだにもユーミアは植物モンスターに止めを刺すところまで来ていた。
ユーミアは真上にいるのに、植物モンスターはその蔦を只管正面に振るっている。
決してその蔦が当たることなど無いというのに。
ユーミアの力とセンスはもはやグラスウィングバタフライの域を超えている。
ユーミアを注視していたパリスは、
一瞬、一瞬だけだが、ユーミアが植物モンスターの生命力を吸い尽くす寸前にどこか残酷な狂嗤を浮かべていたように見えた。
それは本当に気のせいと思えるほどの刹那だった。
「……気のせい…だよな…?」
パリスはそう思い込むことにした。
だが気のせいだと思い込もうとするにも印象が強すぎた。
しかしそんなことをグダグダきにしているようではカッコ悪いのではないか?
相手の植物がモンスターだっただけで表情の薄い子がおいしいものを食べてる時だけ笑顔になってる。
そう考えればいいんじゃないか?
取り敢えず多少難があっても可愛い女の子にはすべて許してやってもいいじゃないか。
だって可愛いんだし。そんなことを考えるパリスはあるいみ懐が広い。
だからちょっと狂気が垣間見えてもユーミアが可愛い限りパリスの中での評価は下がらない。
ただ、すべての物事に理由があるわけじゃないが理由がある場合もあるので、
自分好みの笑顔を浮かべてくれるようにこれから考えていこうとパリスは考えていた。
ラブコメならデートイベントで後ろからついてくるその他のヒロインズや応援している親友ポジションがいたり、
とらぶるったり、邪魔が入ったりして逆に急接近したりするが、このお話はラブコメではない。
邪魔は入るが上昇するのはラブ値よりも経験値だ。




