蝶カッコ悪い魔王様VS嘗ての妻
大罪の魔王達の内、最も人間に対して攻撃的なのは燃える蝶の魔王、『色欲』のラクサー又はパリスだ。
魔王側からの積極的な大侵攻の内、飛びぬけて無差別かつ破壊的であったと言われている。
蝶のモンスターと言えば『女神の御使い』との関連性は何百年物学者たちの議論の末、
様々な説が生まれた。
魔王が女神の御使いと敵対して滅ぼしたという説、
そして異端なものに女神と魔王の御使いが同一だというものもあるが、
処女の守護女神の教会から強い非難を受けてこの説を表立って唱えるものは少ない。
アイを失ったパリスもとい魔王ラクサーは無差別に周囲を燃やしていた。
アイを失ったその日から例え蝶であれメスであれ燃やしていたラクサーは、
バーニングゼフィルスからブレイズゼフィルスというS-クラスの個体に
完全に枷が外れたパリスは『色欲』の力を全開にし、
その力によって明かりに引き寄せられる虫の如く、
周囲に存在する性別がメスであるもの全てを引き寄せ抱きしめるように燃やし尽くしていた。
魔王の種族と魔王の名から、ラクサーブレイズと呼ばれたこの炎は、異性を引き寄せ燃やし尽くす、
魔王の代名詞となる技となった。
「ハハハ、モエロモエロ、モエルヨウニコイシ、コイニモエテクチテイケ。
ドコノドイツデモナンデモイイ。ヤサシイオレサマハ、
ブスダロウガ、ババアダロウガ、ガキダロウガアイシテヤルヨ、
ミンナミンナ、オレノアイノホノオデダキシメテヤル。」
燃えていくメスたちの中にはかつてミザリオスのコミュニティーにいたメスたちの姿も多くある。
彼女たちもパリスの燃えるような愛を求め、それに応えられ、燃えていく。
そんな壊れた様に異性を集め、喰らい、その塵を撒いて回るラクサーの前に、
一匹の蝶が寄ってきた。その美しさには見覚えがあった。
「哀れね、誰よりも見た目の美醜に拘ったあなたが誰でもいいだなんて言いだすなんて。
……あの白蝶を失ったから、あなたが誰より深く愛したあの娘が死んだから、こうなってしまったのね。」
「オ、オマエ…ハ、ア、いリーンか…。」
「えぇ、あなたの一番にはなれなかったけど、あなたが一番であったアイリーンよ。」
「なゼ、こコに…?」
「寂しいんでしょ。…あの娘がいなくなった今、あなたを愛してあげられるのは私かなって。
慰めてあげる…。」
そう言ってラクサーに近づくアイリーン。
他の有象無象同様燃えてもいいのだろう。…しかしそれをを制止するものがいた。彼女の姉妹だ。
「止めなさい。アイリーン、死ぬ気ですの?あなたは。」
「えぇ、それが何か?例え今この瞬間だけでも、彼は私のもの、
私は彼のもの。…ようやく、ようやく欲しかったものが手に入るの。今更姉面しないでくれる?
もしかして羨ましいの?想いの為に命を懸けられる私が。
……あの時助けてくれなかったことをもう恨んでるわけじゃないの。
ただ、愛する者に愛されて死んでいける。私を私として価値を認めてくれたオスの抱擁の中で死んでいける。
雌としての幸せは、姉さん、たとえあなたにでも邪魔してほしくは無いの…。さよなら。
さぁ………パリス。愛し合いましょう。」
そういってアイリーンはラクサーを抱きしめるように近づいていった。
――――そして燃え尽きた。




