2. 「なろう」的王道が得意でない作家は、王道ジャンルとどう向き合うべきなのだろうか
まだ「小説家になろう」で本格的な活動を初めて間もない私ではありますが、
「小説家になろう」で活動を始める前と後で大きく印象が変わったことがあります。
「小説家になろう」というと、王道ジャンル(異世界転生、悪役令嬢など)に
人気が集中し、作品もそのジャンルのものが大半を占めていると思っていました。
たしかに読者人気には王道ジャンルのものが圧倒的に高くはあるのですが、
投稿作品全体のジャンルの割合を新着情報などから見てみると、
実際には王道ジャンルを投稿している人の割合はどうも2割ぐらいなのです。
「小説家になろう」はもともとジャンルを限定していないサイトですし、
それゆえ「王道ジャンルかどうかは関係なく小説を書いて投稿したい」
という人も多く集まっていて、こうした図ができあがっているのでしょう。
そしてその中には「なろう的な王道ジャンルにはそこまで興味がない」という人も多いでしょう。
私自身もその中に入っていると思います。
一方でPVやポイントを得るなら、王道ジャンルのほうがいいとも言われます。
そして小説を投稿するなら誰しも一定の評価は欲しいと思うものです。
しかしそうすると、
「かといってPV目的で興味のないジャンルをあえて創作したいとは思わないし、
それをするのは一人の作家としてジレンマを感じる」
という人も多いでしょう。
私自身もそのようなことをつらつらと思っていました。
ただそこでふと次のようなことが思いついたのです。
「王道ジャンルのフォーマットを使ったからといって、
別に『王道ジャンルの王道展開』にする必要はなくて、
『もし自分がこのジャンルを題材にするならば、どんな物語を書きたいだろうか』
と考え、自分なりのボールを投げてみればいいのではないか」
ということです。
ジャンルというのはあくまで創作の大枠や素材の一つに過ぎません。
そのジャンルにおいて特定の料理方法が流行していたとしても、
「そのジャンルを他の人とは違った自分なりの調理をする」ことで、
ジャンルを“借り”つつ自分らしい創作をすることはできます。
そうした発想が自分の中に湧いてきて、
「自分が令嬢の婚約破棄ものを書くならどのようになるだろうか」
と考えていると、インスピレーションが湧いてきて、
そのようにして書いたのが昨日投稿した
「公爵令嬢である私に熱心に求愛してきた男と婚約したら、浮気されたうえに婚約破棄されて私の父が激怒!そこで選んだ私なりの究極の復讐とは・・・?」
でした。
これまでは「小説家になろう」で定番になっている
「作品に盛り込んだ要素を全部取り込んだモリモリ長文タイトル」
はつけていませんでしたが、今回はあえてそこも徹底しました。
「徹底したときにどういう反応が得られるか」を試してみたかったのです。
この作品を投稿してからちょうど丸1日ぐらい経ったばかりですが、
すでに過去作の1作品あたりのPVの15倍ぐらいの数字を記録し、
日間現実世界恋愛ランキング(短編)でもベスト10以内に入りました。
正直なところ、ここまで顕著な違いが出るとは思っていませんでした。
ジャンルの選び方やタイトルのつけ方、タグのつけ方、
そこに徹底的にこだわっただけで驚くほどの変化が出ました。
それでいて、「ジャンルは借りながらも自分の表現したいものを表現できた」
という思いもあるため、その点ではもやもやした感情も全くありません。
ただしこの作品を投稿したとき、多少の迷いもありました。
それは「たしかに王道ジャンルを一定程度踏襲した作品ではあるものの、
作品の内容と方向性はそのジャンルが好きな人の好みからは外れているはずで、
表面的にPVは伸びても作品に好感を持ってくれる人は実は増えないのではないか」
ということでした。
たとえばPVが15倍に増えても、
見に来てくれた人のうち、作品に好感を持ってくれた人の割合が1/15に
下がってしまったら、結局好感を持ってくれた人数は同じになってしまうので、
あまり意味はないのではないかということです。
ただこれは完全に杞憂でした。
過去の数作品では得られたポイントがどれも0ptだったのに対して、
今回の作品ではポイントを入れてくれた人もそこそこいたからです。
これは言い換えると、「期待していたタイプの話とは違ったスタイルだったけど、
これはこれでいいのではないか」と思ってくださった人が意外といたということです。
これは私としては非常に大きな発見でした。
私は今後「王道ジャンルのフォーマットを借りつつ自分の作風を盛り込む」
というスタイルの作品ばかりを書こうと思っているわけではないですが、
この手法は自分のスタイルの一つにはなっていきそうです。
そしてこれはもしかすると
「自分は「なろう」的王道が得意でないけど、王道ジャンルとどう向き合うべきなのだろう」
と感じている他の作家さんにも一定の参考になるのかもしれません。
「王道ジャンルを素材として借りて、そこに王道展開ではなく
自分ならではの作風を盛り込む」、これも意外にいいものかもしれません。
そういう点からも、今回の作品からは私自身も大いに学べることがありました。




