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他サイトで330万PV突破! 無能と蔑まれた能力値1の転生した元社畜のオッサンが、地球知識で爆鳴魔法を編み出し、常識を変える!  作者: だい


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第68話:神業の医療と、猛獣たちの夜

政庁の奥深く、厳重な警護が敷かれた当主の寝所は、重苦しい死の空気に包まれていた。

豪奢な布団の中に横たわる男性――アマテラスの当主ヨシハルは、浅く掠れた呼吸を繰り返し、その顔はすでに土気色に染まっている。


「……なるほど、こりゃ酷いな」


俺は布団の傍らに片膝をつき、右目に魔力を集中させてヨシハルの体内を透視した。

視界に浮かび上がるのは、本来ならば力強く血液を送り出しているはずの心臓の惨状だ。心臓を栄養する血管が詰まり、一部の心筋が完全に血流を絶たれて黒ずんでいるのがはっきりと見えた。


(これ、完全に心筋梗塞だろ。死にかけて、心筋に深刻なダメージを負ったせいで、重度の心不全に陥ってるんだ)


前世の医学知識と照らし合わせれば、すぐに答えは出た。

一度壊死した心筋は自然には元に戻らない。残された正常な心筋だけで無理やり全身に血を送り出そうとして心臓が肥大し、限界を迎えている状態だ。


(むしろ、心筋梗塞を起こした発作の時点で即死しててもおかしくないのに、よく一年も生きてたな。このオッサン、相当ツイてるぜ)


原因と患部さえ正確に把握できれば、俺の魔法で対処できる。

俺は右目でヨシハルの心臓に繋がる『大静脈』と『肺静脈』の正確な座標を探り当てた。


「よし。少し荒療治になるが、すぐに楽になる」


俺は空間魔法の『転移』を発動させ、アイテムボックスから取り出したノキア最高品質のポーションを、ヨシハルの大静脈と肺静脈の血管内へ直接送り込んだ。

同時に、心臓の外側にもポーションを極小のミスト状にして転移させ、直接噴霧する。


ポーションの強烈な修復作用が、壊死しかけていた心筋細胞を強制的に再生させていく。

俺の右目の視界の中で、黒ずんでいた心臓の筋肉が本来の赤々とした色を取り戻し、弱々しかった拍動が、ドクン、ドクンと力強いリズムを刻み始めた。


「っ……おお……!」


効果は劇的だった。

虫の息だったヨシハルの呼吸が途端に深く穏やかなものになり、土気色だった顔にサッと血の気が戻る。

それどころか、高純度のポーションが直接血流に乗って全身の血管を巡ったことで、硬化していた血管そのものが若返り、老人のようにシワシワだった皮膚の張りやツヤまでが、信じられないほど瑞々しく回復していったのだ。


「と、当主様……っ! おお、ヨシハル兄上……っ!」


ゆっくりと目を開けたヨシハルを見て、家老のカツナリと弟のヨシモリが、周囲の目も憚らずに畳に顔を擦り付けて号泣し始めた。

治療は無事に成功だ。これなら明日には普通に起き上がれるだろう。

感動の再会を果たしているアマテラス陣営の邪魔をするのも野暮なので、俺はザラたちを連れて、そっと寝所を後にした。




政庁に用意されたノキア使節団用の控室。

すっかり落ち着きを取り戻し、出された茶を飲んで一息ついていた時のことだ。


「……ねえ。当主さん、随分と肌艶よくなってたよねえ……」


茶を啜りながら、ザラがポツリとこぼした。

俺は何も考えず、医学的な事実としてその理由をあっさりと口にした。


「おそらくだけど、ポーションが直接血管に入って全身に回ったからな。シミとかが無くなったり、血管が若くなったから血色が良くなって、肌の張りが良くなったんじゃないか?」


言った直後。

部屋の空気が、ピタリと凍りついた。


「…………」


気がつくと、そこには獲物を狙う『獣の眼』をした女が三人、俺を完全包囲していた。


「……旦那さあ。アタシも最近、肌がさ?」


ザラが背後からガシッと俺の肩を組み、逃げ道を塞ぐ。


「ケント君。私、シーナと比べて張りがねぇ?」


横に座ったセリーナさんが腕を組み、その豊かな胸元をことさらに強調しながら、有無を言わさぬ圧をかけてくる。


「ケント様。私は十代の頃は、もっと跳ね返るようだったんですよねえ……」


そしてレナまでもが、後ろから俺の背中に柔らかい胸を押し当てながら、耳元でねっとりと囁いてきた。


「ちょ、お前ら……待て、あれは心臓が止まりかけてる重病人を治すための、極めて高度で危険な緊急措置でだな……!」

「アタシらの肌も緊急事態なんだよ。や・れ・る・よ・ね?」

「ケント君ならできるわよね?」

「ケント様……お願いいたしますね?」


命懸けの戦場よりも恐ろしい、美への執念という名の絶対的なプレッシャー。

逃げ場などどこにもなかった。俺は滝のような冷や汗を流しながら、最強の女子三人衆に完全に追い詰められ、泣く泣く三人の静脈にポーションを転移させる羽目になったのだった。


――そして、その日の夜。


「ああっ……旦那ぁっ……!」

「ケント君、もっと……っ、ああっ……!」

「ケント様……素敵です……っ!」


ポーションの血管内投与によって細胞レベルで若返り、まさに「ぴちぴち」の極上ボディに仕上がった三人の猛獣たちは、夜のベッドで尋常ではないスタミナと絶倫ぶりを発揮した。

肌の張りも、体の感度も、恐ろしいまでに跳ね上がった三人に、俺は朝まで休む間もなく徹底的に搾り取られ、貪り尽くされた。


「……死ぬかと思った……」


翌朝。

満足しきって艶やかな寝顔を浮かべる三人の横で、俺は頬がげっそりとこけ、虚ろな目のまま、自分自身の体力を回復させるためにアイテムボックスからポーションを取り出し、一気飲みする羽目になった。




そして、昼。

奇跡的な回復を遂げ、完全に政務に復帰できるまでに顔色を良くした当主ヨシハルを交え、ノキアとアマテラスの首脳陣による最終的な外交交渉の場が設けられた。


長机を挟んで、俺と、ヨシハル、カツナリ、ヨシモリが向かい合う。


「ノキアの大使殿。この度の命を救っていただいた御恩、アマテラスの当主として、生涯忘れません」

「感謝の言葉は受け取りますが、俺はノキアの全権大使です。ビジネスの話をしましょう、ヨシハル殿。……まずは、俺たち使節団を襲撃したツキヒメと、その責任を被ろうとしたトキマルに対する処分だ」


俺が本題を切り出すと、アマテラス側の三人の顔に緊張が走った。

俺は手元の書類を軽く叩き、決定事項を口にする。


「表面上、両者はノキア王国への『留学』という名目で、この国を出ることになります」

「留学……ですか? 処刑ではなく?」


カツナリが驚いたように聞き返した。


「そうです。ただし、その中実は全く異なります。トキマルはノキアの『学園』へ正式に入学させます。次期当主としての見聞を広め、帝王学を学ばせ、卒業後には必ずアマテラスへ戻って家督を継がせる。これは本物の留学であり、ノキア側も彼を丁重に扱います」


十歳であの覚悟を見せたガキだ。ノキアの教育を受けさせれば、必ず両国の未来を繋ぐ立派な太いパイプになる。


「では、ツキヒメは……?」

「シンの工作員と密約を交わし、国を売り飛ばそうとして我々ノキア外交団を襲撃させた女を許すわけにはいきません。表向きこそ留学の継続としますが、実態はノキアでの『無期限の軟禁』です」

「無期限の軟禁……」

「処刑してしまえば、アマテラス国内の反ノキア派や武断派が、彼女を『悲劇の姫』として神輿に担ぎ上げるでしょう。それを防ぐための、一生飼い殺しの人質です。二度とアマテラスの土を踏むことは許しません」


俺の提案に、ヨシハルとヨシモリは深く息を吐き、静かに頭を下げた。


「……寛大なご処置に感謝いたします。我らも、それが両国にとって最も血が流れぬ道であると理解しております」

「ええ。そして当主が復活し、お家騒動の火種が取り除かれたからには、アマテラス国内の大掃除を始めてもらいます」


俺はカツナリとヨシモリに鋭い視線を向けた。


「国内に潜伏するシンの工作員や、それに寝返った国人たちの摘発。これに関しては、ノキア側から『暗部』の人間を多数送り込み、あなた方の裏仕事の手助けをさせます」

「ノキアの暗部を……!? それは、誠にありがたい。我らの手だけでは、どうしても後手になりがちでしたゆえ」


カツナリが身を乗り出して喜ぶ。


「さらに、帝国との戦争で俺たちが奪い、徴発した『新型銃』の一部と、ノキア軍の教導部隊をアマテラスに派遣します」

「銃、ですか。あの、武断派が軟弱者の武器だと蔑んでいた……」

「武士の誇りで国が守れるなら苦労はしません。仮想敵国であるシンを牽制しつつ、旧態依然としたアマテラスの軍制に銃を組み込み、近代化を図ってください。ノキアが全面支援します」


俺の言葉に、ヨシモリがハッとしたように顔を上げた。


「……大使殿。ノキアがそこまで我らを支援してくださる理由は何です? いくら国交を結ぶとはいえ、一方的すぎる支援に見えますが」

「もちろん、無償の善意ではありませんよ。見返りはキッチリいただきます」


俺はニヤリと笑い、要求を突きつけた。


「アマテラスの武士たちが使う『属性魔法を直接射出して戦う方法』やアマテラス独自の強化魔法などの戦闘技術。これを、派遣するノキア軍の兵士たちに教導してください」


これこそが、俺の一番の狙いだった。

アマテラスで魔法を見た時、俺とシャルは確信したのだ。あの遠距離からの魔法射出技術をノキア軍が取り入れれば、軍の生存率と殲滅力は飛躍的に向上する。それにインナーバフも取り入れるべきだし、剣術も見るべきものが多くあるのだ。


「なるほど……。互いの軍事技術を交換し、両国の軍を共に強化するということですか」

「そういうことです。ノキアとアマテラス、互いの利益のために強固な繋がりを持ちましょう」


俺が右手を差し出すと、当主ヨシハルはその手を力強く握り返してきた。


「承知いたしました。アマテラスは、ノキア王国との国交と同盟を、ここに正式に誓いましょう」


こうして、政治的な落とし前をつけ、互いの利益となる軍事技術と人員の交換を取り決めたノキアとアマテラスは、新たな同盟国として確かな一歩を踏み出したのだった。

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