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他サイトで300万PV突破! 無能と蔑まれた能力値1の転生した元社畜のオッサンが、地球知識で爆鳴魔法を編み出し、常識を変える!  作者: だい


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第58話:ハリボテの義肢と、狂犬の魔眼覚醒

バンッ!!!


「できました! これは良いですよー! ケントくーん!!」


 病室のドアが木っ端微塵になる勢いで蹴り開けられた。

 いい雰囲気になりかけていたセリーナさんと俺はビクッと肩を震わせ、慌てて距離を取る。

 入り口に立っていたのは、漫画のように真っ黒な隈を目の下に作り、髪はボサボサ。徹夜明け特有のちょっと酸っぱい匂いを漂わせた、『生活魔法研究会』顧問のオリヴィア先生だった。


「せ、先生……? ノックくらいしてくださいよ……」

「そんなことより見てください! 男爵の脚の欠損と神経の断裂を補うための、魔法陣駆動式・外骨格義足の試作機です!!」


 オリヴィア先生は、鼻息を荒くしながら、表面にびっしりと緻密な『魔法陣』が刻み込まれた金属製の装具を掲げてみせた。

 俺はため息をつきつつも、セリーナさんに手伝ってもらい、その義足を右足に装着してみた。……が。


「……先生、これ、ただのロフストランド杖と変わらないぞ」

「えっ……?」


 装具に魔力を流し込んでみるが、ひどく重く、動きも鈍かった。歩くというよりは、右半身麻痺の人がリハビリ用の装具を重そうに引きずっているような感覚で、効果は極めて限定的だった。


「そ、そんな……。関節部を動かすための風魔法と土魔法の陣を、これ以上ないほど最適化して刻んだのに……っ」


 徹夜の苦労が実らず、オリヴィア先生がその場にへたり込んでポロポロと泣き出してしまった。セリーナさんが「大丈夫よ、先生。最初はこんなものよ」と優しく背中を撫でて慰めている。

 だが、俺は不格好な義足を見下ろしながら、この装具が失敗した『明確な理由』に気づいていた。


(……魔法陣の限界だ。どれだけ陣を緻密にしても、魔法陣から出力される力は『能力値1』にしかならない。俺の体重を支えて歩かせるには、圧倒的にパワーが足りないんだ)


 だが、オリヴィア先生が組み上げた「魔法陣で関節の動きを補助する」というアプローチ自体は、決して間違っていない。


「先生」


 俺はベッドから身を乗り出し、泣いているオリヴィア先生の肩をガシッと力強く引き寄せ、ハグをした。


「ひゃうっ!?」

「方向性は完璧に合ってる! 魔法陣の出力が足りないなら、その陣を『回路』にして、俺の魔力で直接補助してやればいい。……これからだよ、先生!」


 俺が満面の笑みで告げると、オリヴィア先生は顔をゆでダコのように真っ赤にして「あわわわわ」とパニックを起こし、そのまま白目を剥いてショートしてしまった。


 それからの俺たちの義肢開発は、確実に進歩していった。

 最初は外骨格外部のみに魔方陣を刻んで関節を駆動させるタイプだったが、内部にも魔法陣を刻んで魔力を流し駆動させ倍の出力持つタイプへと進化。

 普通程度の歩行などは十分こなせるものができた。この発明は非常に意味のある物で、多くの人たちを救う素晴らしい発明だ。

 

 しかし、俺はもう一段上の『戦闘の為の義肢』が欲しかった。

 だが、俺の魔力値3000という膨大なエネルギーを義足の回路に直接流し込むと、金属の関節パーツがその出力に耐えきれずに軋み、あっという間に壊れてしまうのだ。機械的な強度と、俺の魔力の出力が全く噛み合わない。

素材強度と出力のギリギリの調整を繰り返しては壊す日々。

 

 並行して俺の固まった膝関節は、無理やり魔力で動かせるように、ストレッチや外科手術で可動域の切除を行い、強引に広げていった。


 そんな中、見舞いに来ていたシャルがふと漏らした一言が、最大のブレイクスルーを生んだ。


『機械で動かすから壊れちゃうんだよね。いっそ、ケントの魔力で、足そのものが生えたらいいのになぁ』


(…………それだ!)

 俺はオリヴィア先生と相談して、今まで作っていた義足の概念を根本からひっくり返してみた。

 機能を詰め込むのではなく、「軽く、硬く、薄く」、そして「魔力を満たしても絶対に外に漏れない素材」で、まずは、ただの足の形をした『ハリボテ』を作らせたのだ。


 接続部からも一切魔力が漏れないその密閉空間に、俺自身の魔力、それも水と風と土を混ぜスライムのように柔らかいが高密度な物を作りだして満たしてやる。

『疑似的な足の筋肉と骨』を作り出すのだ。ただ魔力で手足作ろうとしても難しかったのだが、義足で型が有って漏れないのなら鋳造の様に押し込めてやればいいのだ。

並の魔術師なら使い続けると魔力枯渇を起こす無茶苦茶な手法だが、幼い頃からの魔力拡張で魔力値3000以上で、なおかつ魔力操作が得意の俺は、足に押し込んだ魔力を散る前に回収してまた使うこともできる。息をするのと同じくらい容易いことだった。


 さらに「内部に魔法陣を刻み」そこから膝や足首の外側に埋め込んだ魔道具を起動する魔力源として利用し、前世のパワードスーツのようになっている。インナーバフの踏み込みに魔道具の出力が加わり、踏み込みやジャンプなどは以前より強くなった。 


「……動く。完全に、俺の意のままだ」


 ハリボテの義足に魔力を満たした俺は、ベッドから降り、怪我をする前と全く同じように、軽やかにその場で跳躍してみせた。

 さらに、欠損した右手の指も、手袋状に作らせた特殊な義手の中に魔力を満たすことで、完璧にキーボードを叩けるレベルの精密動作を取り戻した。


「あとは、顔だな」


 俺は、オリヴィア先生が作り上げた特製の『仮面』を右顔面に装着した。

 額から耳付近までを覆う、漆黒の仮面。その右目の部分には、上質な水晶レンズが埋め込まれている。

 普段、その右目の部分は装甲で閉じられている。だが――。


 カッ!


 俺が魔力を流し込むと、仮面の右目の装甲がスライドして開き、奥に埋め込まれた透明な水晶のレンズが姿を現した。

 特別な『伝説の魔眼』などではない。ただの透明な水晶のレンズだ。だが、俺がその後ろ側の空洞から魔力をレンズに拡散させ、屈折率や波長をコントロールすることで、それは文字通りの『魔眼』へと変貌する。


「……すげえ。壁の向こうの熱源まで丸見えだ」


 ただの光学的な視力はもちろん、前世の知識を活かしたズーム機能、赤外線反応、そして他者の魔力の流れまで視覚化できる。

 耳に仕込んだ集音材も同様だ。鼓膜と三半規管の働きを魔力で代行させ、パラボラアンテナのように特定の音だけを拾い上げる機能まで備わっている。


 失明と聴力喪失というハンデを、科学知識と魔力操作のゴリ押しで、以前よりも遥かに凶悪な『センサー』へと昇華させてしまったのだ。

 鏡の前に立つ俺の姿は、左目だけが覗き、右半身を黒い仮面と義肢で覆った、完全な『ダークヒーロー』のそれだった。

 オリヴィア先生がいる事も忘れ、思わず右手を顔の前に出し、ジョジョ立ちを決めた俺を責められる人間などいないだろう。


「だ、大成功です男爵! これでまた、一緒に研究ができますね!」

「あ、うん、ありがとうな先生」


 ジョジョ立ちの事は二人ともスルーして、オリヴィア先生とハイタッチを交わし、俺は完全復活の喜びに浸っていた。




 一方その頃。

 王都の某所では、俺の知らないところで、恐るべき『大人女子会』が開催されていた。


「まったく、アタシがいない間にケントを食い損ねるなんて、セリーナもまだまだ甘いねぇ」

「でもザラ……。や、やっぱり私がケントとって……」


 残党狩りから帰還したザラが、大口でエールを煽りながら、真っ赤になって俯くセリーナの肩をバンバンと叩いている。

 その向かいの席では、ニナからの謹慎処分が解けて復活したレナが、両手で頬を押さえながらムッツリとした笑みを浮かべていた。


「昨晩『じっくり』と確認したところケント様の『お体は十分』に動くようになってましたわぁ…、ふふ、ニナ様も領地へ行かれましたし、たまったお世話を今日も隅々まで……ふふふっ」

「ちょ、ちょっとレナちゃん! あなたまた忍び込んだの!?」

「セリーナ、あんた……羨ましいんだろ?」


 ザラがニヤリと笑い、セリーナの耳元で悪魔のように囁いた。


「いいかい。あいつはもうすぐ15歳、男として一番血気盛んな時期だ。おサルさんみたいなもんさ。あんたも冒険者出身なんだから男のそういうのは分かるだろ?

おまけにあのクロエっていうのとシーナなんて綺麗でぴちぴちの若い娘二人に囲まれてるんだ。もしあいつが結婚前にあの子達に手を出したり、我慢できなくて他の子に手を出したり娼館に行って、シーナが傷ついたらどうするんだい?

娘の婚約者がそんな間違いを犯さないようにするのも、親の役目ってもんだろ?」

「そ、それは……」

「だからこそ、アタシたち『大人の女』が、定期的にあいつの『毒』を抜いてやる必要があるのさ。娘のために、母親が『仕方なく』処理をしてやる。……娘の旦那さんになる男なんだ、それくらいお安い御用だろう?」


 ザラの無茶苦茶な論理に、レナも「その通りですわ!」と強く頷く。


「シーナ様の婚約者が浮気しないように、お母様であるセリーナ様が身を挺して防波堤となる……。なんて素晴らしい愛の形でしょう!」

「なっ……! わ、私はそんなつもりじゃ……っ!」


 顔から火が出るほど赤面し、必死に抵抗しようとするセリーナだったが、肉食獣である三十路の美魔女と、性欲がバグった未亡人のペースに完全に巻き込まれ、ズルズルと外堀を埋められていくのだった。


 完全復活を果たしたサイボーグ狂犬。

 だが、彼の前に待ち受けているのは、魔物や暗殺者よりも遥かに恐ろしい、大人の女性たちの『深い愛』であった。

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